企業出版の見積書を受け取っても、金額が妥当かどうかは判断しづらいものです。書かれているのは総額と、ざっくりした項目名だけということも珍しくありません。

金額そのものを比べても答えは出ません。同じ「企業出版」でも、含まれている工程が事業者ごとに違うからです。本記事では、費用がどの工程に発生するのかを分解し、見積書を読むときの確認点を整理します。

この記事で分かること:

  • 書籍の費用が発生する工程と、その中身
  • 見積書に出てこない実費(ISBN・印刷・送料)の目安
  • 見積書を読むときに確認する5つの点

費用は「工程の束」でできている

書籍の制作には、おおまかに次の工程があります。事業者によって、どこまでを引き受けるかが違います。

工程 中身 省けるか
企画・設計 目的の整理、読者設定、章立て 省けない
取材・ヒアリング 話を聞き、材料を集める 省けない
執筆 原稿を書く 著者が自分で書けば省ける
編集・校正 構成の調整、事実確認、日本語の整え 省けない
図表・デザイン 本文レイアウト、図表、表紙 省けない
電子書籍化 入稿データの作成、ストアへの登録 紙だけなら不要
印刷・製本 紙の本を刷る 電子だけなら不要
書店流通・書店営業 取次への搬入、書店への配本と営業 手渡しとオンラインだけなら不要
倉庫・在庫管理 刷った本を保管する 在庫を持たなければ不要
広告・プロモーション 書籍の告知 任意

「省けるか」の列が、費用差の正体です。 書店に並べる必要がなければ、流通・営業・倉庫の費用は払う必要がありません。逆に全国の書店に置きたいなら、そこは省けません。

見積書に出てこない実費

制作費とは別に、実費が発生することがあります。金額は小さいものが多いですが、見落とすと後から出てきます。

ISBNの登録料

自社の名前を出版者として登録したい場合、日本図書コード管理センターでISBNを取得します。新規登録の料金は、発行できる点数によって分かれています。

出版者記号の桁数 発行できる点数 新規登録の料金
8桁(シングルコード) 1点 11,000円+税
7桁 10点 22,000円+税
6桁 100点 40,320円+税

(2026-09-19時点で公開されている料金表による。最新の金額は必ず公式の料金表で確認してください)

Amazon KDPで出版する場合、KDPが無料のISBNを提供しています。 ただし出版社の表示は「個人出版」になり、KDP以外では使えません。自社名を出版者として出したい場合は、自分でISBNを取得する必要があります。詳しくはISBNと書店流通の基礎をご覧ください。

紙の本の印刷費

Amazon KDPのペーパーバックは、注文が入るたびに印刷されるため、前払いの印刷費も在庫も発生しません。 印刷コストは売上から差し引かれます。

Amazon.co.jpで販売する場合の印刷コスト(モノクロ印刷・白/クリーム色の用紙)は次のとおりです。

ページ数 印刷コスト
24〜110ページ 1冊あたり422円
110〜828ページ 1冊あたり206円 + 1ページあたり2円

たとえば200ページなら、206円 + 2円×200ページ = 606円です。

手渡し用に自分で本を持っておきたい場合は、著者用コピーとして印刷コストで注文できます(別途送料)。著者用コピーは無料で配ることも、販売することもできます。

そのほか

  • 写真・図版・イラストの使用許諾料
  • 外部の写真撮影を入れる場合の撮影費
  • 監修者・専門家に確認を依頼する場合の謝礼
  • 手渡し用の配送費

公開されている料金例で水準を見る

参考として、公式サイトで料金を公開している例を見ます。

鳥影社の企業出版プランは、四六判200ページ・2,000部までで300万円(税別)からです。この金額にはカバーデザイン、宣伝コンセプトとキャッチコピーの作成、プロの編集者による校正・編集、印刷・製本(2,000部まで)、そして書店流通・書店営業・倉庫代が含まれます。一方、ライターによる執筆と撮影は別途のオプションと記載されています。

ここから読み取れるのは、書店流通の比重が大きいことと、執筆が必ずしも含まれないことです。同社は32ページ・全ページカラー・2,000部の小冊子で150万円(税別)からというプランも公開しています。

なお、検索で出てくる「企業出版の相場」という数字は、出典ごとに大きく異なります。その多くが企業出版を販売する事業者自身のメディアに掲載されているためです。本記事で金額を挙げるのは、公式サイトで料金を公開しており、内容を確認できたものに限っています。

当社の場合

参考として、当社のAI書籍出版代行の条件を記載します。

費用:80万円〜(税抜・表紙デザインを含む)

含まれるもの

  • ヒアリング・企画設計
  • AIによる執筆と、プロ編集者による品質確認
  • 図表・表紙デザイン
  • Amazon KDPへの入稿代行
  • 少部数の印刷・製本

含まれないもの

  • 書店流通、書店営業
  • 倉庫・在庫管理
  • 自社ISBNの登録料(取得される場合の実費)

版権は著者である御社に帰属します。原稿執筆は最短1週間が目安です(内容・分量・ご確認の状況により異なります)。

工程が違うため、書店流通を含むプランとの金額差を「削減率」として示すことはしていません。比べるなら、必要な工程が揃っているかどうかで比べてください。

費用の詳細はこちら他方式との比較はこちら

見積書を読むときの5つの確認点

  1. 執筆は含まれますか。 含まれない場合、誰がどう書きますか。
  2. どこまでが定額で、どこからが従量ですか。 ページ数・図版点数・修正回数の上限はどこですか。
  3. 印刷部数は何部ですか。 在庫はどこが持ちますか。追加印刷の単価はいくらですか。
  4. 書店流通は含まれますか。 不要なら、その分は外せますか。
  5. 版権・電子版の権利・増刷の判断権は誰のものですか。 契約終了後はどうなりますか。

特に5は口頭の説明では足りません。契約書の条文で確認してください。

修正回数は後から揉めやすい項目です。「何回まで」「どこからが範囲外か」を、見積の段階で書面にしておくことをおすすめします。

まとめ

  • 費用は工程の束です。金額を比べる前に、含まれる工程を比べてください。
  • 書店流通・書店営業・倉庫は、手渡しとオンライン販売だけなら不要な費用です。
  • 制作費とは別に、ISBN登録料や手渡し用の印刷・送料といった実費が発生することがあります。
  • Amazon KDPは注文のたびに印刷するため、前払いの印刷費と在庫は発生しません。
  • 見積書では、執筆の有無・従量の境目・部数と在庫・流通・権利の5点を確認してください。

どの工程が必要で、どこは要らないのか。目的の整理から一緒に考えます。他社の見積書を見ながらのご相談でも構いません。

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参考情報

※料金は改定されることがあります。実際のご検討にあたっては、各社の公式サイトで最新の金額をご確認ください。