「本を出したい。でも何を書けばいいか分からない」。企業出版のご相談で最も多いのがこれです。

テーマから考え始めると、たいてい行き詰まります。決める順序が逆だからです。本記事では、目的から逆算してテーマを固める手順を説明します。

この記事で分かること:

  • テーマを決める順序と、1枚にまとめる企画シート
  • 社内にある「書ける材料」の見つけ方
  • 書いてはいけない内容の線引き

決める順序

次の順で決めます。テーマは4番目です。

  1. 目的 — この本で何を起こしたいか
  2. 読者 — 誰に読ませたいか
  3. 読後の変化 — 読み終えた読者に、何が変わっていてほしいか
  4. テーマ — そのために何を書くか
  5. 章立て — どういう順で書くか

目的が「商談で渡して信頼してもらう」なのか「採用候補者に会社を理解してもらう」なのかで、読者も、書くべき内容もまったく変わります。

目的 読者 読後の変化 テーマの方向
商談を進めたい 検討段階の担当者 判断の基準が分かる 選び方・失敗の型
採用につなげたい 応募を迷っている候補者 働く姿が想像できる 仕事の中身・意思決定
業界での立ち位置を示したい 同業・取材者 独自の視点を知る 現場からの提言
経営者の考えを残したい 社員・取引先 判断の背景が分かる 転機と決断

目的を1つに絞ってください。 商談にも採用にも業界向けにも使える本を目指すと、どの読者にも刺さらない本になります。

読者は1人に決める

「中小企業の経営者」では広すぎます。次のくらいまで絞ります。

従業員30〜100名の製造業で、自社の技術を言語化できておらず、若手採用に苦戦している二代目社長

ここまで絞ると、使う言葉も、前提としてよい知識の範囲も決まります。絞ると読者が減るのではなく、絞った読者には確実に届きます。

絞り込みの材料は社内にあります。営業が最近よく会っている相手、問い合わせフォームに書かれている悩み、面接で候補者から出る質問。それが実在の読者像です。

社内にある「書ける材料」を棚卸しする

新しく考える必要はありません。次を集めてください。

  • 商談で毎回説明していること — 何度も説明するということは、世の中に情報が足りていないということです
  • よく聞かれる質問 — そのまま章のタイトルになります
  • 失敗から学んだ判断基準 — 成功事例より読まれます
  • 数字で言えること — 自社で測っている実数(社外に出せる範囲で)
  • 現場の写真・図・帳票 — 図版の素材になります
  • 社内の文書 — 提案書、社内報、研修資料、議事録

これがAIに渡す材料になります。 材料の質が本の質を決めます。生成AIは、渡していない情報を持っていません。一般論だけで書かれた本になるかどうかは、この棚卸しで決まります。

社外に出せるかどうかは、材料を集めた後に選別してください。先に自主規制すると、材料そのものが集まりません。

企画を1枚にまとめる

次の項目が埋まれば、企画は固まっています。埋まらない欄があれば、そこが未決です。

項目 記入内容
目的 この本で起こしたいこと(1つ)
読者 具体的な1人の像
読後の変化 読者が得るもの、取る行動
一言でいうと 30字以内でこの本の主張
読者が得をする理由 なぜ他の本ではなくこれを読むのか
自社にしかない材料 数字・経験・現場
章立て 8〜12章(各章1つの問い)
分量 目安の文字数
形式 電子のみ/紙のみ/両方
使い方 誰がどこで渡すか

「一言でいうと」が書けない企画は、まだ固まっていません。 ここが曖昧なまま執筆に入ると、全体を書き直すことになります。

分量の目安は、当社の制作実務では次のように置いています(業界標準ではなく、目的から逆算した目安です)。

形式・用途 文字数の目安
Kindleで読み切ってもらう 3〜5万字
紙で商談に渡す 6〜9万字
社史・正史として記録する 10万字超

章立ての作り方

1章=1つの問いにします。章タイトルを疑問文で書いてみて、答えが1つに定まらなければ、その章は分けるべきです。

目次が自社の事業部構成や沿革の順で並んでいたら、会社案内になっているサインです。読者が抱える問いの順に並べ替えてください。

章の並べ方は、読者の思考の順にします。

  1. 読者が困っていることの言語化(「そう、それが知りたかった」と思わせる)
  2. なぜそうなるのかの構造説明
  3. どう判断すればよいかの基準
  4. 実際にどう進めるかの手順
  5. うまくいかないときの対処

書いてはいけないこと

企画段階で線引きしておくと、後戻りが減ります。

内容 扱い
取引先名・顧客名 事前の許諾が必要。守秘義務契約の確認を
従業員の実名・写真 本人の同意が必要。退職者は特に注意
他社の資料・図表 出典明記だけでは足りない。転載は許諾が必要
新聞・雑誌記事 記事全体の掲載は通常「引用」の範囲を超える
根拠のない数値・順位 出典と算出条件を示せないものは書かない
効果の保証 「必ず〜できる」は書かない

他人の著作物を許諾なく使える「引用」には条件があります。公表された著作物であること、引用の必然性があり引用部分が明確に区別されていること、自分の文章が主で引用が従という関係が保たれていること、目的上正当な範囲にとどまること。記事や図表をまるごと載せる行為は、通常この範囲を超えます。

Amazon KDPで出版する場合、AIで生成した文章・画像・翻訳を含むときは、出版時にその旨を申告する必要があります。 人が書いたものをAIで改善した「AI支援」は申告の対象外とされています。当社が制作した原稿についても、どちらに当たるかをご説明したうえで手続きします。

企画が弱いときのサイン

  • 目次が自社の事業部構成になっている
  • 「弊社は」で始まる段落が多い
  • 章の中身を説明しようとすると、話が毎回変わる
  • 「誰に」と聞かれて「経営者全般」と答えてしまう
  • 自社でなくても書ける内容しかない

ひとつでも当てはまるなら、テーマではなく目的と読者に戻ってください。

まとめ

  • テーマから考えないでください。目的 → 読者 → 読後の変化 → テーマ → 章立ての順です。
  • 読者は1人に絞ると、言葉も前提も決まります。
  • 材料は社内にあります。商談で毎回説明していること、よく聞かれる質問、失敗から学んだ基準。
  • 「一言でいうと」が30字で書けたら、企画は固まっています。
  • 取引先名・実名・他社資料・新聞記事は、企画段階で扱いを決めておいてください。

企画が白紙の段階からご相談いただけます。ヒアリングをもとに、目的・読者・章立てを整理した企画案をご提示します。

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参考情報

  • Amazon KDP コンテンツガイドライン(2026-09-19確認)— 著作権・商標・プライバシー・パブリシティ権を侵害する内容は認められない。AIで生成した文章・画像・翻訳は出版時に申告が必要で、人が作成した内容をAIで改善した「AI支援」は申告の対象外。
  • 文化庁 著作権テキスト(令和6年度版)(2026-09-17確認)— 引用として許諾なく利用できる場合の要件(公表された著作物であること、公正な慣行に合致すること、引用の目的上正当な範囲内であること、主従関係が明確で分量が相応であること)。

※本記事は一般的な説明であり、個別の事案についての法的助言ではありません。判断に迷う場合は権利者への確認、または専門家にご相談ください。