社長が一人で会社を率いているとは限りません。共同代表、創業者と後継社長の二人体制、機能ごとに権限を分けた複数の役員体制。読者が知りたいのは会社の実像であって、「代表者は一人」という前提で本の作り方を当てはめると、どこかに無理が出ます。
結論から言うと、体制の型によって「誰の言葉としてまとめるか」の最適解は変わります。二人の声をそのまま残す対談形式、二人の考えを一つの一人称に統合する形式、章ごとに担当を分ける分担形式の3つがあり、どれを選ぶかで取材の設計も原稿の書き方も変わります。
この記事では、経営者が複数いる体制で経営者本を作るときの判断の分かれ目と、実際の制作で起きやすいつまずきを整理します。
この記事で分かること:
- 経営者が複数いる体制のパターン別に向く構成
- 対談形式・統合形式・分担形式の使い分けと注意点
- 取材と事実確認で工数が増える場面
経営者が複数いる体制にはいくつかのパターンがある
一口に「経営者が複数」と言っても、実際の体制はさまざまです。まず自社がどれに近いかを整理してください。
| パターン | 特徴 | 本づくりで生じやすい論点 |
|---|---|---|
| 共同代表(対等な二人) | 意思決定を二人で分担、対外的にも並列 | 発言量・登場順の公平さ |
| 創業者+後継社長(過渡期) | 経営権が移行中、両者とも現役 | どちらを主語にするかが時期で変わる |
| 機能別分担の経営陣(CEOとCOO等) | 領域ごとに責任者が異なる | 全員を出すと焦点がぼやける |
| 家族経営(親子・兄弟で役員) | 私的な関係と経営判断が重なる | 家族間のエピソードの公開範囲 |
パターンによって「誰の言葉か」の答えは変わります。共同代表なら公平さが問われますし、過渡期なら時間軸をどう見せるかが問われます。次の章で、実際の構成の型に落とし込みます。
「誰の言葉」にするかは3つの型に分かれる
| 型 | 内容 | 向くケース | 必要な取材量 |
|---|---|---|---|
| 対談形式 | 二人の発言をそのまま交互に並べる | 共同代表で個性の違いを見せたい | 二人分+擦り合わせの取材 |
| 統合形式 | 「私たち」の一人称に融合して書く | 意見がほぼ一致している共同代表 | 二人分だが融合の編集工数が増える |
| 分担形式 | 章ごとに担当者を明示して書き分ける | 創業者と後継社長、機能別の経営陣 | 担当者ごとの単独取材 |
対談形式は個性の違いがそのまま読者に伝わる一方、二人のトーンが揃っていないと散漫な印象になります。統合形式は読みやすい一冊になりますが、実際には意見が割れている論点まで「私たち」でまとめてしまうと、社内から見て違和感のある内容になりがちです。分担形式は役割分担が明確な体制に向きますが、章ごとの分量差が読者に「主役はどちらか」という印象を与える点に注意が必要です。
過渡期の体制であれば、AIで経営者本を書くで扱っている単独の経営者本の作り方をベースに、後継社長を主語に置いて創業者を特定章のゲストとして登場させる分担形式が扱いやすい選択です。
パターンと型の組み合わせ方の目安
先の2つの表を重ねると、体制ごとにおすすめの型が見えてきます。
| 体制のパターン | おすすめの型 | 理由 |
|---|---|---|
| 共同代表(対等な二人) | 対談形式、または統合形式 | 公平さが重視され、一方だけを主語にしにくい |
| 創業者+後継社長(過渡期) | 分担形式(後継社長を軸に) | 対外的な顔をどちらにするかが時期で明確 |
| 機能別分担の経営陣 | 分担形式 | 領域ごとの専門性を活かせる |
| 家族経営 | 統合形式、または分担形式 | 私的な関係が前面に出すぎないよう調整しやすい |
ただしこれは目安です。共同代表でも意見の一致度が低ければ対談形式のほうが自然な仕上がりになりますし、機能別分担でも全員を均等に扱うと焦点がぼやけるため、実際には主軸となる一人を決めた上で他の経営者を各章のゲストとして配置するケースが多く見られます。この主軸の決め方こそが、取材前に最も時間をかけて詰めるべき論点です。
取材で起きやすいつまずき
複数の経営者を取材すると、単独取材にはない論点が出てきます。
- 創業エピソードの記憶が食い違う。創業した年や出来事の順番について、二人の記憶がずれていることは珍しくありません。
- 「著者」としてのクレジットの扱い。表紙の著者名やAmazonの著者ページに誰の名前をどう並べるかを、事前に決めておく必要があります。
- 一方が取材に乗り気でない。経営判断は共同でも、対外発信への熱量が同じとは限りません。
- 発言のトーンの差。一方は数字や実績を語りたがり、もう一方はエピソードを語りたがるということがあります。
これらは取材前に把握しておくほど、構成の手戻りが減ります。企画段階で「誰が何を語りたいか」を簡単にヒアリングしておくことをおすすめします。実務上は、共同代表であれば単独インタビューをそれぞれ実施したうえで、記憶が食い違う箇所だけを両者同席の場で擦り合わせる、という進め方が手戻りを抑えやすい方法です。
よくある失敗の型
- 発言量を機械的に半分ずつにして、結果として焦点がぼやける。公平さを優先しすぎると、読者には「結局この本は誰が主役なのか」が伝わりません。
- 対談を整えすぎて、広報担当が書いたような均質な文体になり、二人の個性が消える。
- 片方の視点に偏り、社内やもう一方の経営者から「自分の意見が反映されていない」と不満が出る。
- 章ごとの分量を先に決めてから取材した結果、内容が薄い方の章を無理に膨らませ、読み物としての密度が下がる。
いずれも、取材段階で「誰の言葉として届けたいか」を決め切れていないまま原稿化を進めたことが原因です。
費用・工数が増える場面
経営者が複数いる体制では、単独の経営者本に比べて次の場面で工数が増えます。
- 単独インタビューがそのまま人数分増えます。二人なら取材回数は単純に倍近くになります。
- 事実確認の往復も人数分発生します。特に創業エピソードなど記憶が食い違う箇所は、双方への確認が必要です。
- どちらの発言をどこまで残すかという構成の合意形成に、経営陣内での調整時間が必要になります。この調整は当社の外側で発生するため、御社側で見込んでおいてください。
当社の対応範囲と御社にお願いすること
当社が引き受ける範囲は、複数の経営者への個別取材の設計と実施、対談形式・統合形式・分担形式のいずれかを選んだ場合の構成案作成、原稿化とプロ編集者による品質確認です。
御社にお願いすることは、どの形式にするかという最終判断、複数名の取材日程の調整、そして構成案に対する経営陣内での合意形成です。特にどの形式を選ぶかは今後の対外発信の方針にも関わる経営判断であり、当社から一方的に決めることはしません。
なお、共同代表制の法的な位置づけ(代表権の範囲など)は会社法上の論点であり、当社では扱っていません。登記や代表権に関わる事項、対外的な肩書の表記に決まりがあるかどうかは、顧問弁護士や登記の専門家にご確認ください。
費用は**80万円〜(税抜・表紙デザインを含む)**が基準ですが、経営者が複数いる体制では取材回数が増える分、御見積りの段階で人数を共有してください。全体の進め方はAIで企業出版するには?ChatGPTで会社の本を書く全手順もあわせてご覧ください。
まとめ
- 経営者が複数いる体制は、共同代表・過渡期・機能別分担・家族経営など複数のパターンがあり、パターンごとに向く構成が異なります。
- 「誰の言葉か」は対談形式・統合形式・分担形式の3つに整理でき、体制と経営者間の意見の一致度で選びます。
- 取材では創業エピソードの記憶違いや著者クレジットの扱いなど、単独取材にはない論点が出てきます。
- 発言量を機械的に均等にする、対談を整えすぎるといった失敗は、誰の言葉として届けたいかを決め切れていないことが原因です。
- 取材回数と事実確認の往復は人数分増えるため、見積り段階で経営者の人数を共有してください。
複数の経営者がいる体制での発信は、体制の説明そのものが読者の関心事になります。どの形式が御社に合うか、体制の整理からご相談ください。