本の説得力を高めるために「監修者」を立てるかどうか、立てるなら経営者本人か社外の専門家かで悩む担当者は少なくありません。どちらが正しいという話ではなく、本の目的によって向き不向きが変わります。
経営者自身が監修すれば、当事者としての実感がそのまま説得力になります。社外の専門家に依頼すれば、第三者としての客観性が加わります。ただし、それぞれに制作の進め方が変わり、日程や費用への影響も違います。
この記事で分かること:
- 経営者本人と社外専門家、それぞれの監修が本の説得力に与える違い
- 制作の進め方と日程がどう変わるか
- 社外の著作物を引用する場合に確認すべき点
監修者を誰にするかで何が変わるか
| 観点 | 経営者本人が監修 | 社外専門家が監修 |
|---|---|---|
| 説得力の源泉 | 当事者としての実感・経験 | 第三者としての客観性・専門性 |
| 弱点になりやすい点 | 自社に都合の良い見方に偏りやすい | 会社固有の事情への理解が浅くなりやすい |
| 意思決定のスピード | 速い(その場で判断できる) | 専門家のスケジュール調整が必要 |
| 想定する本の性格 | 経営者の考え方・会社の歩みを伝える本 | 業界動向・専門分野の解説を含む本 |
経営者本人が監修する場合
経営者自身が監修すると、「なぜこの事業をしているか」を本人の言葉でそのまま乗せられます。 社史や経営理念を伝える本、社長個人の考え方を前面に出す本では、この当事者性が最大の強みになります。
一方で、自社の弱みや失敗については、本人の視点だけでは書きにくい内容も出てきます。「都合の良いことしか書いていない」という印象を避けるには、編集者が第三者の視点で内容を確認する工程が必要です。 経営者本人を主役にした本の作り方はAIで経営者本人を書くで扱っています。
社外専門家が監修する場合
社外の専門家に監修を依頼すると、業界の動向や専門分野についての記述に客観的な裏付けが加わります。 技術解説や業界動向を含む本では、専門家の名前が入ることで内容の信頼性が補強されます。
ただし、専門家は自身の名前を出す以上、内容の正確性について自分自身でも確認したいと考えるのが通常です。 原稿を渡してから確認が返ってくるまでの時間が、本人監修より長くなりやすい点は、日程を組む段階で見込んでおく必要があります。また、監修を引き受ける条件(監修料・記載範囲・責任の範囲)は、専門家ごとに個別の合意が必要です。
制作の進め方・日程への影響
| 工程 | 経営者本人が監修 | 社外専門家が監修 |
|---|---|---|
| 原稿の確認 | 社内のスケジュールで調整できる | 専門家本人の都合に左右される |
| 修正のやり取り | その場で判断できることが多い | 確認事項を書面でまとめるやり取りが増える |
| 監修条件の取り決め | 不要(社内の意思決定で完結) | 依頼前に条件を合意する必要がある |
社外専門家に依頼する場合、監修条件の合意を後回しにすると、原稿が仕上がった段階で「この内容には名前を出せない」と言われる事態が起こりえます。 依頼する時点で、どの範囲を確認してもらうか、名前をどう表示するかを先に決めておくことをおすすめします。
どちらの監修体制を選んでも、原稿に書いた固有の数字・日付・当時の状況といった事実確認そのものは省略できません。 監修者の役割は、事実確認が済んだ内容について「業界的に見て妥当か」「専門家として名前を出せる水準か」を判断することであり、事実確認の代わりを務めるものではありません。
判断が逆転する場面
「経営者の本だから経営者が監修すればよい」「専門的な内容だから社外専門家が必要」と単純に割り切れない場面もあります。
- 経営者の考え方を語る本でも、健康・法律など専門知識が絡む記述を含む場合、その部分だけは社外の専門家に確認してもらったほうが安全です。 経営者本人の実感だけで押し切ると、誤った情報を含んだまま出版するリスクが残ります。
- 業界動向の解説がテーマの本でも、読者が主に既存顧客で、すでに経営者の判断を信頼している関係であれば、社外専門家を立てなくても内容が受け入れられることがあります。 この場合、専門家への依頼費用と日程を割かずに進められます。
- 全編を社外専門家に監修してもらう必要はなく、技術的な記述がある章だけを部分監修してもらうという中間案もあります。全体監修より費用と日程への影響は小さくなりますが、章の切り分けと、確認してもらう範囲の事前合意は欠かせません。
「誰が監修するか」より先に、「本のどの部分に第三者の裏付けが必要か」を洗い出すと、全体監修か部分監修かの判断がしやすくなります。
外部の著作物を引用するときに確認すること
社外専門家の既存の著作や発言を本文で引用したい場合、著作権法上の引用の要件を満たす必要があります。文化庁の解説によれば、無断で引用として使うには次を満たす必要があるとされています。
- 公表された著作物であること
- 公正な慣行に合致すること
- 引用の目的上正当な範囲内であること
- 引用部分が明確に区別され、自分の文章が主・引用が従という主従関係が保たれ、分量が相応であること
専門家の著書や記事をまるごと転載するような使い方は、通常この範囲を超えます。 部分的な引用にとどめ、出典を明記してください。
※本記事は一般的な説明であり、個別の事案についての法的助言ではありません。
当社の対応範囲
当社では、原稿の執筆とプロ編集者による品質確認までを担当します。社外専門家を監修者として起用する場合、専門家の選定・依頼・監修条件の交渉は御社にお願いしています。 監修者から入った指摘を原稿に反映する編集作業は、当社の対応範囲です。
企画段階で「誰の言葉で語る本にするか」を決めておくと、監修者選びもスムーズになります。企画の立て方は会社の本のテーマの決め方で解説しています。監修体制以外の進め方全体を他社と比較したい場合は、企業出版サービスの比較と選び方もあわせてご覧ください。
まとめ
- 経営者本人の監修は当事者としての実感が強みですが、自社に偏った内容になりやすい弱点もあります。
- 社外専門家の監修は客観性を補強しますが、確認のやり取りに時間がかかり、監修条件の事前合意が必要です。
- 日程は、本人監修なら社内の都合で、専門家監修なら相手の都合で左右されます。
- 専門家の著作物を引用する場合は、著作権法上の引用の要件(公表・正当な範囲・主従関係・分量)を満たす必要があります。
- 当社は原稿執筆と編集を担当し、監修者の選定と依頼、監修条件の交渉は御社にお願いしています。
どちらの監修体制が本の目的に合うか、企画の段階から一緒に整理できます。
参考情報
- 文化庁 著作権テキスト(令和6年度版)(2026-09-17確認)— 引用が認められるための要件(公表された著作物であること、公正な慣行への合致、正当な範囲内であること、主従関係と分量の相応)。