一人で書く本と、複数の部署やメンバーで分担して書く本とでは、必要な体制がまったく違います。一人で書く場合は執筆の進め方が課題ですが、複数人で書く場合は、誰が何を担当し、誰が全体をまとめるかという体制そのものが課題になります。

「営業部と開発部それぞれに一章ずつ書いてもらいたいが、誰がどう取りまとめればよいか分からない」という相談は珍しくありません。本記事では、複数人で分担する場合の役割分担と取りまとめ方だけを扱います。

この記事で分かること:

  • 章の割り振り方の基準と、取りまとめ役に必要な役割
  • 進捗のばらつき・分量の偏り・文体の不統一への対応
  • AIを使う場合、各担当者と編集がどう役割分担するか

まず取りまとめ役を一人決める

複数人で書く本で最初に決めるべきは、章の担当者ではなく、全体の進捗と原稿の質に責任を持つ取りまとめ役です。取りまとめ役がいないまま各部署に執筆を依頼すると、誰も全体の一貫性に責任を持たない状態になります。

取りまとめ役の仕事は、執筆そのものではなく、進行管理と最終的な調整です。経営企画や広報など、社内の全部署と接点がある立場の担当者が向いています。

複数人執筆では、少なくとも次の3つの役割を意識して分けてください。同じ人が兼ねてもかまいませんが、役割自体をあいまいにしないことが重要です。

役割 担うこと
取りまとめ役 割り振り・進行管理・最終的な文体と内容の調整
各章の執筆担当 取材への対応、原稿またはAIへの指示内容の作成
社内レビュアー(法務・広報など) 社外秘の扱いや表現の適切さの確認

社内レビュアーを後工程に置き忘れると、原稿がほぼ完成した段階で修正が必要な指摘が出て、スケジュールが崩れます。レビュアーへの回付は、各章の執筆と並行して進めておくと手戻りが少なくなります。 特に社外の取引先が登場する章は、レビューに時間がかかりやすいため、他の章より早めに回す判断が有効です。

章の割り振り方の基準

割り振り方には主に3つの型があります。御社の組織構造と本の目的に合わせて選んでください。

割り振りの型 向いている場合 注意点
部署ごとに1章 各部署の取り組みを網羅的に紹介したい 部署間で分量や熱量に差が出やすい
テーマごとに横断的に担当 特定のテーマに詳しい人が複数部署にまたがる 誰がどこまで書くか、事前に線引きが必要
経験者が複数章、他は補助 執筆に慣れた人が少数いる 特定の担当者に負荷が偏りやすい

部署ごとに1章を割り振る型が最も分かりやすく選ばれやすい一方、部署間で発信したい情報の温度差が出やすいという弱点があります。取りまとめ役は、この差を事前に想定した上で割り振ってください。

着手前に合意しておくこと

割り振りが決まった後、執筆に入る前に次を全担当者と合意しておくと、後の手戻りが減ります。

  • 各章の目安文字数(分量の差を防ぐため、数値で共有する)
  • 提出の締切日と、提出形式(Word・Googleドキュメントなど)
  • 誰にどんな情報を書いてよいか(社外秘の扱いを含む)
  • 想定読者と、本全体で伝えたいメッセージの一文

この合意が曖昧なまま各担当者に任せると、ある章は詳細な事例が並び、別の章は概要だけで終わるといった偏りが起きます。分量のばらつきは、多くの場合、着手前の目安共有が不十分なことが原因です。

進捗管理の実務

複数人が同時並行で書く場合、誰がどこまで進んでいるかを取りまとめ役が把握できる仕組みが要ります。

管理項目 内容
担当者・章 誰がどの章を担当しているか
締切日 初稿・修正稿それぞれの締切
進捗状況 未着手・執筆中・提出済み・確認中
提出形式 原稿の保存場所とファイル名の統一ルール

進捗の遅れが出た担当者への催促は、締切当日ではなく、締切の数日前に一度状況を確認する形にすると、遅れが判明してからの調整余地が生まれます。締切当日に初めて未提出だと分かるのが、最もよくあるつまずき方です。

遅れが常態化した担当者への対応

数日前の確認でも進捗が芳しくない場合、そのまま待つのではなく、次のいずれかに早めに切り替えてください。

  • 取りまとめ役がヒアリング形式で内容を聞き取り、代わりに原稿化する
  • 締切を延ばす代わりに、章の分量を圧縮する
  • 別の担当者に一部を引き継ぐ

「もう少し待てば出てくるはず」という判断を繰り返すことが、全体のスケジュールを崩す一番の原因です。 一人の遅れが、後続の編集・校正工程全体に影響することを、取りまとめ役はあらかじめ意識しておく必要があります。

文体・情報の重複と矛盾をどう調整するか

複数人が書くと、文体の違いだけでなく、同じ話題に別々の章で触れて内容が食い違う、といった問題も起きます。これは各担当者の努力で防ぐより、原稿が出そろった後に、取りまとめ役または編集者が全章を通して読み、重複と矛盾を洗い出す工程を設けるほうが確実です。

文体の統一そのものについては、専門用語や社内用語の扱いも関わってきます。担当部署によって使う専門用語の頻度や種類が異なるため、統一の基準を決める作業は一人分の原稿を直すより手間がかかると見込んでおいてください。詳しくは専門用語・社内用語の言い換えとわかりやすさの調整方法とコツの基本、表記の統一ルールについては会社の本の表記ゆれの統一ルールの作り方|社名・製品名・数字の揃え方で扱っています。

AIを使う場合の役割分担

各担当者がAIに指示を出して下書きを作る方法と、取りまとめ役や編集が窓口になって各担当者からヒアリングした内容をAIに反映する方法があります。

  • 各担当者がAIを使う場合:執筆の負担は分散するが、AIへの指示の質にばらつきが出やすく、結果として文体や粒度もばらつく
  • 編集が窓口になる場合:各担当者は取材に応じるだけでよく負担が少ないが、取りまとめ役・編集側の作業量は増える

社内に執筆やAIの活用に慣れた担当者が少ない場合は、後者のほうが現実的です。逆に、各部署にAIの活用経験がある担当者が既にいる場合は、前者の方が各担当者の当事者意識を保ちやすく、取りまとめ役の負荷も抑えられます。どちらを選ぶかは、社内の慣れ具合を見て決めてください。AIを使った執筆全体の流れはAIで企業出版するには?ChatGPTで会社の本を書く全手順、テーマや読者の決め方は会社の本のテーマの決め方|読者と目的から企画を固める手順で扱っています。

当社が担う範囲・御社にお願いすること

当社が担うのは、各部署からいただいた素材やヒアリング内容をもとに、原稿を執筆し、一冊としての構成・文体・分量を整える工程です。**基本料金80万円〜(税抜・表紙デザインを含む)**には、この編集による統合作業も含まれます。

一方で、どの部署がどの章を担当するか、誰を取りまとめ役に立てるかという社内の体制づくりそのものは、御社にお願いする範囲です。当社では各部署の力関係や社内事情まで把握できないため、割り振りの決定権は御社に残していただいています。進捗管理の仕組みや催促のタイミングについては、経験に基づく助言という形でご相談に応じています。

まとめ

  • 複数人で書く本では、章の割り振りより先に取りまとめ役を一人決めます。
  • 割り振りの型は部署ごと・テーマごと・経験者中心の3つがあり、組織構造に合わせて選びます。
  • 目安文字数・締切・想定読者は、着手前に全担当者と合意しておきます。
  • 進捗確認は締切の数日前に行うと、遅れへの対応余地が生まれます。
  • 文体と内容の重複・矛盾は、原稿が出そろった後にまとめて調整する工程が現実的です。

体制づくりの段階からでもご相談いただけます。関わる部署の数や、社内の執筆・AI活用の経験値をお伺いした上で、割り振りの型と進行管理の進め方をご提案します。

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