参考にしてほしい資料を渡しても、AIが書いた原稿にほとんど反映されていない、という相談を受けます。原因の多くは、資料を「読ませて」いるだけで、どう使うかを指示していないことにあります。
結論から言うと、資料は渡す前に「事実」と「主張」に仕分け、それぞれの使い方を指示文の中で分けて書く必要があります。本記事では、集めた資料をAIへの執筆指示にどう組み込むかという手順だけを扱います。
この記事で分かること:
- 資料が原稿に反映されない典型的な原因
- 資料の種類ごとの指示の書き方
- 出典と確認日を指示に入れる方法
資料を渡すだけでは反映されない理由
資料の全文をAIに読み込ませても、それをどこにどう使うかの指示がなければ、AIは自分の持っている一般的な知識の範囲で文章を組み立ててしまいます。「この資料を参考にしてください」という指示は、方向を示しているだけで、使い方までは伝えていません。
反映させるには、資料のどの部分を、どういう形で原稿のどこに使ってほしいかまで、指示文に書く必要があります。資料を渡す作業と、使い方を指示する作業は別の工程だと考えてください。
資料を「事実」と「主張」に仕分ける
資料には、変えてはいけない「事実」と、資料の作成者の見解である「主張」が混在しています。この2つを同じ扱いで渡すと、AIは主張の部分も事実のように断定して書いてしまうことがあります。
| 種類 | 指示の書き方の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 事実(数値・日付・制度の内容) | 「この数値と日付は変更せず、そのまま使ってください」 | 出典と確認日を併記させる |
| 主張・評価(資料作成者の意見や推測) | 「参考意見として扱い、自社の見解のように断定しないでください」 | 資料の意見をそのまま自社の主張として書かせない |
社内資料も同様です。実績データは事実として扱い、担当者の所感や見立てはそのまま断定させず、参考情報として扱うよう指示します。仕分けに迷う場合は、数値化できるものは事実、担当者の言葉でしか語れないものは主張、という基準で分けると判断しやすくなります。
資料の種類ごとの指示の書き方
資料の種類によって、指示の重点が変わります。
| 資料の種類 | 指示の要点 |
|---|---|
| 社内データ・実績 | 社外に出せない数値がないか確認したうえで渡す。表現を丸める場合はその指示を添える |
| 外部記事・白書 | 原文のコピーではなく要約で使うよう指示する |
| 書籍からの引用 | 引用として使ってよい分量には別のルールがあるため、その前提を伝える |
| 競合サイトの文章 | 表現をそのまま真似させず、事実だけを抽出させる |
書籍や記事からの引用をどこまで使えるかという法律上の条件は、他社資料や書籍を引用する際に守るべき著作権法上のルールの基本知識にまとめています。資料をAIに渡す前に、この境界を踏まえておくと、あとから書き直す手間が減ります。
指示文の書き方の例
抽象的な指示と、資料を反映させやすい指示を比べると、書き方の違いがはっきりします。
| 指示の書き方 | 結果 |
|---|---|
| 「この資料を参考に書いてください」 | 資料の要点が反映されず、一般的な内容になりやすい |
| 「資料のうち、売上の推移を示す数値(〇年〇月時点)はそのまま使い、担当者の所感は参考程度に留めて自社の言葉で書いてください」 | 使ってよい部分と書き直す部分が分かれ、原稿に反映されやすい |
指示文は、資料そのものを渡すことと、その資料をどう扱うかを伝えることの2段階でできています。多くの場合、抜けているのは2段階目です。
指示文にまとめると、次のような形になります。
【資料】社内実績データ(〇年度)、外部記事1本 【事実として扱う】実績データの数値と日付はそのまま使用 【主張として扱う】外部記事の分析コメントは参考に留め、自社の言葉で言い換える 【出典表記】外部記事は媒体名・URL・確認日を末尾に明記
この4項目を毎回のプロンプトに含める習慣をつけると、資料が増えても抜け漏れが起きにくくなります。資料の数が多いプロジェクトほど、この形式をテンプレート化しておくと、途中で担当者が変わっても同じ基準で指示を出せます。
出典と確認日を指示文に入れる
資料の内容を原稿に反映させるときは、出典と確認した日付をセットで指示に含めます。たとえば「この数値は〇〇(媒体名・URL・確認日)による。原稿にはこの出典を明記してください」という形です。
出典を後からまとめて足そうとすると、どの数値がどの資料に基づくか分からなくなりがちです。執筆指示の段階で出典を書かせておくと、公開前の確認作業が減ります。
引用の分量を超えないための指示
外部記事や書籍の文章をそのまま使いたい場合は、分量にも指示で歯止めをかけます。「原文をそのまま使うのは1か所までにし、それ以外は要約すること」「引用箇所はかぎ括弧で明確に区別すること」といった指示を添えると、まるごと転載に近づくことを防げます。
引用として認められるための条件そのものは、資料の使い方だけで満たせるとは限りません。判断に迷う場合は、前述の著作権のルールに関する記事を確認してください。
AIが資料を無視する・歪める典型パターンと直し方
| 症状 | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 資料の数字を勝手に丸める | 精度についての指示がない | 「小数点以下も資料のとおりに書いてください」と指定する |
| 資料にない情報を補って書く | 一般知識で不足分を埋めている | 「資料にない情報は書かず、不明な場合はその旨を示してください」と指定する |
| 資料の意見を断定として書く | 主張を事実として扱っている | 事実と主張の仕分けを、指示文の中で明示的に分ける |
資料同士の内容が食い違う場合の扱い方
複数の資料を渡すと、数値や表現が資料ごとに食い違っていることがあります。たとえば社内資料と外部記事で導入年が違う、担当部署によって実績数値の集計方法が違う、といったケースです。
このとき「矛盾があれば新しい方を優先してください」とだけ指示すると、AIがどちらを新しいと判断したか分からないまま原稿が仕上がります。食い違いに気づいた場合は、断定せずに両方を示したうえで確認を求めるよう指示してください。 「資料Aと資料Bで数値が異なるため、この箇所は御社に確認してください」といった一文を原稿中に残させる方法が実務的です。原稿を読む段階でその一文に気づければ、公開前に事実確認の抜け漏れとして対応できます。
執筆後の確認:資料と照合するチェック
原稿ができた後は、資料に書かれていない数字や断定が混ざっていないかを、資料と照らし合わせて確認する工程を必ず入れます。AIが自然な文章で書いてしまうと、事実確認をしなければ気づきにくい誤りもあります。
当社の対応
当社の執筆工程では、いただいた資料を事実と主張に仕分けたうえで、執筆指示に落とし込みます。ただし、社内資料の収集や、その資料の内容が正しいかどうかの事実確認は、資料をお持ちの御社にお願いしています。読者像の整理から反映させる場合は、会社の本の読者ペルソナシートの作り方も合わせてご覧ください。全体の進め方はAIで企業出版するには?ChatGPTで会社の本を書く全手順にまとめています。
まとめ
- 資料は読み込ませるだけでなく、どこにどう使うかまで指示文に書く必要があります。
- 資料は「事実」と「主張」に仕分け、それぞれ別の指示を与えます。
- 出典と確認日は、後からまとめるのではなく執筆指示の段階で明記させます。
- 外部記事や書籍の引用には分量の歯止めが必要で、著作権のルールと合わせて確認します。
- 執筆後は、原稿を資料と照合し、資料にない数字や断定が混ざっていないかを確認します。
資料の扱い方に迷う場合は、実際の資料を見ながらご相談いただけます。
※引用として使ってよい範囲の判断は、個別の資料や使い方によって異なります。本記事は一般的な説明であり、個別の事案についての法的助言ではありません。