本を出したあとに、こんな相談を受けることがあります。「取引先が営業資料に本の一部を載せたいと言っている」「海外の子会社が翻訳版を作りたいと言っている」「電子版だけ別の会社に頼んで作りたい」。どれも、契約書のどこかに書かれているはずの話ですが、いざ探すと条項名がバラバラで、何を指しているのか分かりにくいものです。
こうした場面で出てくるのが、二次利用権・電子書籍化権・翻訳権という言葉です。この3つは別々の権利であり、契約書でも別の書き方をされることがあります。 本記事では、それぞれが何を指すのかと、契約書のどこで確認すればよいかを整理します。
この記事で分かること:
- 二次利用権・電子書籍化権・翻訳権がそれぞれ何を指すか
- 契約書のどの条項に、何が書かれているかを見る手順
- 当社で本を作った場合、これらの権利がどう扱われるか
二次利用権・電子書籍化権・翻訳権は別の権利です
まず前提として、これらは著作権そのものではなく、著作権をどこまで、誰が、どう使ってよいかを定める許諾の範囲を指す言葉です。契約書では、著作権の帰属を定める条項と、利用の許諾範囲を定める条項が分かれていることが多く、二次利用権などは後者に含まれます。
二次利用権とは
本の内容を、書籍という形態以外の用途で使う権利です。たとえば、本文の一部を自社の営業資料や採用パンフレットに転載する、セミナーの配布資料に使う、社内報に再掲する、といった使い方が該当します。「二次利用」という言葉自体に法律上の厳密な定義があるわけではなく、契約書ごとに使える範囲が個別に定義されます。
電子書籍化権とは
紙で出した本を電子書籍にする権利、またはその逆(電子書籍を紙にする権利)を指します。同じ出版社が両方の形態を扱う契約もあれば、紙は出版社、電子は著者が別途手配する契約もあります。どちらの形態を誰が担当するかは、契約書に明記されているかどうかで変わります。
翻訳権とは
本の内容を他の言語に翻訳して出版する権利です。翻訳権は対象地域や言語を区切って設定されることがあり、「日本語版のみ」「アジア地域向けの英語版のみ」のように範囲が限定されている場合、それ以外の言語や地域での翻訳は別途の許諾が必要になります。
契約書のどこに書かれているか
条項の名称は出版社や契約書のひな形によって異なりますが、確認すべき論点は共通しています。次の観点で条文を探すと見つけやすくなります。
| 確認したいこと | 探す条項の例 | 見るべき点 |
|---|---|---|
| 著作権は誰のものか | 著作権の帰属、権利の帰属 | 著者・出版社のどちらに帰属するか |
| 二次利用してよいか | 利用許諾の範囲、二次的利用 | 用途・媒体が限定されていないか |
| 電子書籍化してよいか | 出版権の設定、電子書籍化権 | 紙と電子で権利者が分かれていないか |
| 翻訳してよいか | 翻訳権、二次的著作物の利用 | 対象言語・地域が限定されていないか |
| 独占か非独占か | 独占的利用、専有 | 著者自身も同じ利用ができるか |
| いつまで有効か | 契約期間、存続期間 | 契約終了後に権利が著者へ戻るか |
独占的(専有)か非独占的かは特に見落としやすい点です。 独占契約になっていると、著者自身がその用途で本の内容を使うことも制限される場合があります。
商業出版と自費出版で扱いが変わる
商業出版(出版社が費用を負担して刊行する形態)では、出版社が制作費用を回収する必要があるため、二次利用や電子書籍化、翻訳の権利を出版社側が広く確保する契約になっていることがあります。これは出版社や契約ごとに条件が異なり、一律の相場や慣行として断定できるものではありません。契約前に、二次利用・電子化・翻訳のそれぞれについて、誰がどこまで許諾を出せるのかを条文で確認してください。
一方、著者自身が費用を負担して刊行する形態では、権利を著者に残す契約になっていることが一般的ですが、これも契約書ごとの記載によります。「一般的にこうなっている」という思い込みで進めず、必ず条文で確認する姿勢が必要です。
なお、出版社との商業出版を検討する場合、当社では提携先の出版社を紹介できますが、刊行そのものや契約条件を保証するものではありません。企業出版全体の進め方は企業出版サービスの比較と選び方で整理しています。
権利をめぐって起こりやすいトラブル
契約書の文言があいまいなまま進めると、実際に使いたい場面になって初めて制約に気づくことがあります。よくある型を整理します。
| 起こりやすいトラブル | 原因 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 「二次利用は要相談」とだけ書かれ、実際に使おうとすると追加費用が発生した | 用途を具体的に定めず契約していた | 想定する用途(営業資料への転載など)を契約時に伝え、条件を先に確認する |
| 電子書籍化権を出版社が独占しており、自分でAmazon KDPに登録できなかった | 紙と電子で権利者が分かれる契約だった | 電子化の予定があるなら、契約前に電子書籍化権の帰属を確認する |
| 翻訳権の範囲が地域限定で、海外拠点が自由に翻訳版を作れなかった | 翻訳権の対象言語・地域が限定されていた | 展開予定の地域を契約書に明記してもらう |
| 契約終了後も出版社に権利が残ると思っていた | 契約期間終了後の権利の扱いが条文になかった、または見落としていた | 契約終了後に権利が著者へ戻るかを条文で確認する |
契約書を確認する際のチェックリスト
条項の名前は契約書ごとに異なるため、次の観点で条文を探すと抜け漏れを防げます。
| 確認する権利 | 見るべき条項の内容 | 特に注意する点 |
|---|---|---|
| 著作権の帰属 | 著者・出版社のどちらに帰属するか | 「甲に帰属する」の「甲」が誰を指すか |
| 二次利用の許諾範囲 | 転載・抜粋利用ができる用途と媒体 | 用途が限定列挙されていないか |
| 電子書籍化権 | 紙・電子で権利者が分かれていないか | 自社で別途電子化してよいか |
| 翻訳権 | 対象言語・地域が限定されていないか | 展開予定の地域が含まれているか |
| 独占・非独占の別 | 著者自身も同じ利用ができるか | 「専有」「独占的」の文言の有無 |
| 契約期間・終了後の扱い | 契約終了後に権利が著者へ戻るか | 自動更新の条件も含めて確認 |
これらは契約書の条文でしか判断できません。口頭での説明と条文の記載が食い違うこともあるため、気になる点は条文の該当箇所を示してもらいながら確認することをおすすめします。
当社(AI書籍出版代行)での扱い
当社でご依頼いただいた本は、版権が著者である御社に帰属します。 当社は二次利用権・電子書籍化権・翻訳権のいずれについても、権利を保持したり制限したりしません。営業資料への転載、社内での二次利用、翻訳版の作成は、いずれも御社の判断で進めていただけます。
ただし、翻訳版の制作や、電子書籍化権を含む本の全面的な作り直しは、当社の標準の対応範囲(ヒアリング・企画設計、AIによる執筆とプロ編集者による品質確認、図表・表紙デザイン、Amazon KDPへの入稿代行、少部数の印刷・製本)を超える場合があります。個別に対応可能かをご相談ください。
費用の内訳は企業出版の費用は何にかかる?、制作の全体の流れはAIで企業出版するには?にまとめています。
まとめ
- 二次利用権・電子利用権・翻訳権は著作権そのものではなく、利用の許諾範囲を定める言葉です。
- 契約書では「著作権の帰属」「利用許諾の範囲」「独占か非独占か」「契約期間」の条項を確認します。
- 商業出版では出版社側が権利を広く確保する契約もあり、内容は出版社・契約ごとに異なります。
- 電子書籍化権や翻訳権が地域・言語で限定されていないかは、特に見落としやすい点です。
- 当社では版権が御社に帰属し、当社が二次利用や翻訳の権利を保持することはありません。
契約書のどこを見ればよいか分からない、という段階でもご相談いただけます。
※本記事は一般的な説明であり、個別の事案についての法的助言ではありません。契約内容の解釈は、契約書の条文と必要に応じて弁護士等の専門家にご確認ください。