創業から現在までの歩みを一冊にまとめる社史・記念誌は、社内に向けては理念を共有する資料、社外に向けては会社の信頼を示す資料になります。
一方で「資料集めが大変」「書く人がいない」「何年もかかる」という理由で先送りされがちです。本記事では、AIを活用して制作の負担を減らす進め方と、社史特有の注意点を解説します。
この記事で分かること:
- 社史・記念誌の制作手順と、AIで短縮できる工程
- 資料が足りない場合の考え方
- 権利確認と史実の裏取りで必ず見るべき点
社史・記念誌の役割
社史は「記録」であると同時に「伝達」の手段です。何を目的にするかで、作るべきものが変わります。
| 目的 | 重点 | 分量の目安 |
|---|---|---|
| 社内への理念共有 | 創業の動機、転機での判断 | 3〜5万字 |
| 社外への信頼提示 | 事業の変遷、実績の裏付け | 3〜6万字 |
| 正史としての記録 | 年表、資料、関係者の証言 | 10万字超 |
| 周年イベント用 | 写真、読みやすさ | 2〜3万字 |
複数の目的を1冊に詰め込むと、どの読者にも中途半端になります。主目的を1つ決めてください。
制作の流れ
1. 目的と範囲を決める
何年分を、誰に向けて書くか。10周年と50周年では必要な密度が違います。
2. 資料を集める
次のようなものが素材になります。
- 社内報、社内向けメッセージ
- 決算資料、事業計画書
- 写真、パンフレット、製品カタログ
- 新聞・雑誌の掲載記事
- 登記簿、沿革の記録
- 創業者・元役員・長期在籍者へのヒアリング
ここが最も時間のかかる工程です。 AIで短縮できるのは後の執筆工程であり、資料集めそのものは短縮できません。早めに着手してください。
3. 年表をつくる
集めた資料から、確認できた事実を時系列に並べます。この段階で「資料がない期間」が可視化されます。
4. 構成を決める
年表をそのまま本にしても読まれません。転機となった出来事を軸に章立てし、読み物として成立させます。
5. AIで執筆する
資料と年表、ヒアリング内容をもとに原稿を作成し、プロ編集者が確認します。10万字を超える分量にも対応できます。原稿執筆は最短1週間が目安ですが、社史は資料確認の工程が長くなるため、全体の期間はこれより長くなります。
6. 事実確認
日付・人名・数値・社名を、提供資料と1つずつ突き合わせます。社史で最も重要な工程です。
7. 図表・デザイン・印刷
年表、写真、組織図などをレイアウトし、印刷・製本します。
資料が足りないとき
創業期の資料が残っていない会社は珍しくありません。その場合の考え方です。
推測で埋めない。 「おそらくこの頃に」「〜だったと思われる」という書き方は、記録としての価値を損ないます。
代わりに次の方法を取ります。
- 関係者の証言として書く:「創業者の〇〇によれば」と主体を明示します。記憶違いの可能性も含めて、証言であることが分かる書き方にします。
- 確認できた範囲を明示する:「資料で確認できるのは〇年以降」と書いておけば、後から資料が見つかったときの改訂もしやすくなります。
- 外部資料で補う:当時の新聞記事、業界誌、官公庁の統計などで、会社を取り巻く状況は補えます。
生成AIは、指示しないと空白を推測で埋めようとします。当社では**「資料にない事実は書かない」**方針を明示して原稿を作成し、不明点は「要確認」として残したうえで確認工程に回します。
権利の確認を忘れない
社史は過去の資料を多く使うため、権利関係の確認が欠かせません。
| 対象 | 確認すべきこと |
|---|---|
| 写真 | 撮影者の著作権、写っている人の肖像権 |
| 新聞・雑誌の記事 | 発行元の転載許諾(切り抜きの掲載も対象) |
| 他社提供の資料 | 提供元の利用許諾 |
| 元従業員の写真・氏名 | 本人の同意 |
| 取引先名 | 掲載の可否(取引関係の開示になるため) |
特に新聞記事の転載には注意が必要です。 「自社が載った記事だから自由に使える」わけではありません。著作権法には「引用」として許諾なく利用できる規定がありますが、公表された著作物であること、引用する必然性があり引用部分が明確であること、引用部分とそれ以外の主従関係が明確で分量が相応であることなど、条件を満たす必要があります。記事全体をそのまま載せる行為は、通常これらの条件を超えるため発行元の許諾が必要です。
実務的には、記事そのものを載せる代わりに、掲載日と媒体名だけを年表に記す方法もあります。
当社では、確認が必要な箇所を洗い出してお伝えしますが、許諾の取得そのものは御社にお願いしています。社史では点数が多くなるため、早い段階で着手することをおすすめします。
費用と期間
当社のAI書籍出版代行は**80万円〜(税抜・表紙デザインを含む)**です。社史・記念誌の場合、分量・図版の点数・資料確認の範囲によって変動します。
期間について正直に書きます。原稿執筆は最短1週間が目安ですが、社史の全体期間はこれより長くなります。 資料集め、権利確認、関係者への確認に時間がかかるためです。周年に間に合わせたい場合は、逆算して余裕を持って着手してください。
比較検討の参考として、書店流通を伴う企業出版のプランもあります。含まれる工程が異なるため、必要な流通範囲から選んでください。詳しくは企業出版サービスの比較と選び方をご覧ください。
まとめ
- 社史は目的を1つに絞ると、作るべきものが定まります。
- 最も時間がかかるのは資料集めです。AIで短縮できるのは執筆工程です。
- 資料がない期間は推測で埋めず、証言として書くか、確認できた範囲を明示します。
- 写真・新聞記事・他社資料には権利確認が必要です。記事全体をそのまま載せる場合は、通常「引用」の範囲を超えるため発行元の許諾が必要です。
- 原稿執筆は最短1週間が目安ですが、社史全体の期間はこれより長くなります。周年から逆算してください。
何年分を、誰に向けて残すか。目的の整理からご相談いただけます。
参考情報
- 文化庁 著作権テキスト(令和6年度版)(2026-09-17確認)— 引用として許諾なく利用できる場合の要件(公表された著作物であること、公正な慣行に合致すること、引用の目的上正当な範囲内であること、主従関係が明確で分量が相応であること)。
- 文化庁 著作権施策に関する総合案内ページ(2026-09-17確認)— 著作権制度全般の解説と権利制限規定。
※本記事は著作権制度の一般的な説明であり、個別の事案についての法的助言ではありません。判断に迷う場合は発行元への確認、または専門家にご相談ください。