会社の本を一冊書き終えると、「この内容をサイトにも載せたい」という話が必ず出ます。すでにある原稿を流用すれば、Web用に新しく書き起こす手間が省けるように見えるからです。ただし、本の原稿をそのままコピーしてページに貼り付けても、うまく機能しないことがほとんどです。
本と固定ページでは、読まれ方が違います。 本は前から順番に読まれることを前提に書かれていますが、Webの固定ページは検索やリンクから、途中のページに直接たどり着かれます。本記事では、一冊にまとまった長文の内容を、更新頻度の低いWebサイトの固定ページにどう再構成するかを整理します。
この記事で分かること:
- 書籍の原稿をそのまま貼り付けると起きる問題
- 固定ページに向く章と、向かない章の見分け方
- 更新頻度で内容を切り分ける考え方
書籍とWebページは読まれ方が違う
本は、第1章から順に読むことを前提に構成されています。第3章で「前章で述べたとおり」と書いても、読者は第1章から読んでいるので違和感がありません。
Webの固定ページは、検索エンジンやSNS経由で、そのページに直接たどり着かれます。前の章を読んでいない前提で内容が成立していないと、訪問者はその場で離脱します。 これが、本の原稿をそのままページ化したときに最初につまずく理由です。
そのまま転用できない3つの理由
一つ目は、前の章を前提にした表現が残ることです。 「前章で触れたとおり」「先ほどの例で見たように」といった表現は、単独のページでは意味が通じません。
二つ目は、本の文体がページとして読みにくいことです。 本は連続して読まれる前提で、長めの段落や物語的な導入が使われます。Webでは見出しと短い段落で要点にすぐたどり着ける構成のほうが読まれます。同じ内容でも、本用の原稿とページ用の原稿では、文章の組み立て方を変える必要があります。
三つ目は、内容が本の刊行時点の情報のまま固定されることです。 料金や体制など変わりやすい情報を本の記述のままページに載せると、本の内容とサイトの現状がずれていきます。
固定ページに向く章、向かない章
すべての章が同じようにページ化できるわけではありません。
| 章の内容 | 固定ページ向きか | 理由 |
|---|---|---|
| 会社の理念・創業の経緯 | 向く | 内容が変わりにくく、単独で読んでも成立する |
| サービス・事業の説明 | 向く | 「会社案内」「サービス紹介」の固定ページと相性がよい |
| 代表者のメッセージ | 向く | 単独ページとして自然に成立する |
| 特定時期のキャンペーンや実績の紹介 | 向かない | 時間が経つと内容が古くなる |
| 章をまたぐ伏線・比喩を使った導入 | 向かない | 前後の文脈が無いと意味が通らない |
| 価格・体制など変わりやすい情報 | 向かない | サイトの現状とずれるリスクがある |
向かない章を無理にページ化せず、向く章だけを選んでページの構成を作るほうが、結果として読みやすいサイトになります。たとえば「創業のきっかけ」を語った章は、そのまま「会社概要」ページの一節に転用できますが、「今期の重点施策」を語った章は、施策が変わるたびに書き直しが必要になるため、固定ページよりお知らせ欄のような更新前提の場所に向きます。章の見出しだけでなく、書かれている内容が刊行後も変わらないかどうかで判断してください。
更新頻度で切り分ける
固定ページは「更新頻度が低い」ことが前提です。内容が変わりやすいものを固定ページに載せると、本の記述との整合を取り続ける負担が発生します。
| 内容の性質 | 向く形式 |
|---|---|
| 1年以上変わらない見込みの内容(理念・沿革・基本方針) | 固定ページ |
| 数ヶ月単位で更新する内容(実績・お知らせ・キャンペーン) | 更新頻度の高いページ・ブログ |
| 価格・仕様など随時変わる情報 | 固定ページには載せず、最新情報のページへリンクする |
本の内容を固定ページに載せる場合は、変わりやすい情報を本文中に埋め込まず、必要なら「最新の内容はこちら」というリンクで最新ページに逃がしておくと、本とサイトの内容がずれにくくなります。
Googleの検索・AI機能との関係
固定ページとして整理した内容が、Googleの検索結果やAIによる回答に表示されるかどうかは、ページの作り方だけで決まるものではありません。Googleは、AI機能に表示されるために特別なマークアップやAI専用のファイルは不要だとしていますが、前提として、そのページがインデックスに登録されていて、スニペットとして表示される対象になっている必要があります。そのうえで、要件を満たしても表示が保証されるわけではないとも説明されています。
つまり、固定ページを整理する目的は、AIに表示させることそのものではなく、単独で読んでも内容が成立する、検索から来た読者がそのページだけで用件を満たせる、という状態を作ることです。この整理を意識した企画・構成にしておくと、本の内容とWeb展開の両方を見据えた原稿にしやすくなります。企画段階の考え方は会社の本のテーマの決め方|読者と目的から企画を固める手順で扱っています。
固定ページからの案内先としては、展示会の会期後に送るメールのリンク先としても使えます。会期後のフォローについては展示会の当日ではなく、会期後のお礼連絡で本をどう役立てるかをご覧ください。
当社と御社の分担
当社が担うのは、書籍の原稿そのものの制作と、図表・表紙のデザインです。原稿を作る段階から、後でページ化しやすい章立てにしておく相談には応じられますが、実際にWebサイトへ実装する作業は当社のプランには含まれていません。 ページの実装は御社のWeb担当、または別途の制作会社にお願いすることになります。書籍とWebの両方を見据えた原稿の構成はAI検索時代の企業出版|会社の知見を書籍とWebで伝える方法でも扱っています。
まとめ
- 本は順番に読まれる前提、Webの固定ページは途中から読まれる前提で、必要な文章の作り方が違う
- 「前章で述べたとおり」のような表現は固定ページでは通じない
- 理念・事業説明・代表メッセージなどの章は固定ページに向き、時期性のある内容は向かない
- 変わりやすい情報は固定ページに埋め込まず、最新情報のページへのリンクで逃がす
- 当社は原稿の制作までを担当し、Webサイトへの実装は御社または別の制作会社にお願いする
本の原稿をWebでも活かしたい場合は、企画の段階からページ化を見据えて章立てを組むと、後の作業が楽になります。
参考情報
- Google検索セントラル:AI機能(2026-09-17確認)— AI機能に表示されるために特別なマークアップやAI専用ファイルは不要。インデックス登録とスニペット表示の対象であることが前提で、要件を満たしても表示は保証されない。