原稿が完成しても、それをそのまま本のページに流し込むと読みにくくなることがあります。行間が詰まりすぎている、1行が長すぎる、見出しと本文の区別がつきにくい。 こうした問題の多くは、文章の内容ではなく組版の設定が原因です。
本記事では、本文の行間・文字サイズ・フォント選びという、組版の基礎知識だけを扱います。
この記事で分かること:
- 行間・文字サイズ・字詰めがどう関係し合うか
- 縦組みと横組みをどう判断するか
- 電子書籍と紙で組版の自由度が違う点
行間・文字サイズ・字詰めの関係
読みやすさは、文字サイズだけで決まるわけではありません。文字サイズ・行間(行送り)・1行の文字数(字詰め)の3つはセットで調整するものです。
| 要素 | 大きく(広く)しすぎた場合 | 小さく(狭く)しすぎた場合 |
|---|---|---|
| 文字サイズ | 1行に入る文字数が減り、行の折り返しが増える | 読みにくく、年齢層によっては負担が大きい |
| 行間 | ページ内の情報量が減り、間延びして見える | 行と行が詰まって見え、次の行を目で追いにくい |
| 字詰め(1行の文字数) | 目の移動距離が長くなり、読み疲れしやすい | 折り返しが多くなり、リズムが崩れる |
一般的には、文字サイズを大きくするなら行間も広げる、字詰めを長くするなら行間も広げる、というように連動させて調整します。 どれか1つだけを変えると、他の要素とのバランスが崩れて読みにくくなります。
本文用と見出し用のフォント選び
本文と見出しには、それぞれ役割に合ったフォントを選びます。
- 本文用:長時間読んでも疲れにくい、癖の少ない書体を選びます。明朝体・ゴシック体のどちらも使われますが、本文全体では1つの書体に統一するのが基本です。
- 見出し用:本文と区別がつくよう、太さやサイズを変えます。書体自体を変える場合もありますが、変えすぎると統一感が崩れます。
フォントを何種類も使い分けると、それぞれは工夫のつもりでも、全体としては雑多な印象になります。 本文・見出し・キャプションなど役割ごとに1つずつ決め、それ以上増やさないようにしてください。
縦組みか横組みかの判断基準
会社の本では、縦組みと横組みのどちらも選べます。判断の分かれ目は、本文に何を多く含むかです。
| 本文に多いもの | 向いている組み方 | 理由 |
|---|---|---|
| 物語的な文章、経営者の半生記 | 縦組み | 読み物として通読させる本の伝統的な形式 |
| URL、英数字、社名の英語表記 | 横組み | 縦組みでは英数字が読みにくくなる |
| 図表・グラフを多く挿入する | 横組み | 図表は横組みのレイアウトと相性が良い |
| データを多く引用する実務書 | 横組み | 数値や単位が横組みで自然に読める |
社史や経営者本のような「読み物」は縦組み、データや図表を多く使う実務書は横組み、という傾向で考えると選びやすくなります。 どちらか一方が優れているわけではなく、本文の中身に合わせて選ぶものです。
電子書籍と紙で組版の自由度が違う
紙の本は、1ページごとの見た目を細かく指定してデータを作ります。行間も文字サイズも、意図したとおりに固定されます。
一方、Kindleのような電子書籍のリフロー形式は、読者が端末の設定で文字サイズや行間を変更できる仕組みです。 著者側は基準となる設定を用意しますが、実際にどう表示されるかは読者の端末に依存します。
この違いから、次のような判断が必要になります。
- 紙のように「このページでこの図とこの文章を並べて見せたい」という細かいレイアウトは、電子書籍のリフローでは再現できないことがあります。
- 電子書籍で凝ったレイアウトを狙う場合は、リフローではなく固定レイアウト形式を検討する必要がありますが、その分データの作り方が変わります。
- 紙と電子の両方を出す場合、本文の原稿は共通でも、組版のデータはそれぞれ別に作ることになります。
読みにくくなる組版の失敗パターン
- 文字サイズだけを大きくし、行間を変えずに詰まって見える
- 見出しの装飾を章ごとに変えてしまい、統一感がなくなる
- 段落の頭の字下げや行間の取り方が本文の途中から変わる
- 英数字が多いのに縦組みを選び、数字が読みにくくなる
これらの多くは、途中で設定を見直したときに全体へ反映し忘れることで起きます。 組版の設定は本文全体に対して一括で管理し、途中で個別に変更しないことが、統一感を保つ基本です。
見出し階層と強調表現のルールを決める
原稿の中には、大見出し・中見出し・小見出しといった階層や、太字・箇条書きといった強調表現が混在します。組版に入る前に、この階層と表現方法を本全体で統一しておく必要があります。
- 見出しの階層は3段階までを目安にします。 4段階以上に分けると、読者が今どの階層を読んでいるか把握しづらくなります。
- 太字や傍点による強調は、1ページに多用しすぎないようにします。 すべてが強調されていると、結局どこが重要か伝わらなくなります。
- 箇条書きと本文の使い分けは、章ごとに変えないようにします。 ある章では要点を箇条書きにし、別の章では同じ種類の情報を文章で書いていると、読者はどちらを基準に読めばよいか迷います。
特に、章ごとに分けて原稿を作成した場合は、この階層と表現方法が章によってばらついていないかを組版前に確認する工程が必要です。 各章が別々に作られた原稿ほど、見出しの付け方や強調の使い方に差が出やすくなります。組版に入ってから統一しようとすると、修正箇所が本全体に広がるため、原稿の確定前に表記のルールをすり合わせておくほうが手戻りが少なくなります。
具体的には、組版に入る前のチェックリストとして「見出しは何段階まで使ったか」「太字はどの基準で使ったか」「箇条書きと本文のどちらで書くかの基準は章ごとに揃っているか」の3点を確認しておくと、組版の途中で表現方法の違いに気づいて手戻りする事態を減らせます。
このチェックは、章ごとの担当者や生成のタイミングが分かれるほど重要になります。1人が最初から最後まで書いた原稿では自然に統一されがちな表記も、複数回に分けて作成した原稿では、後から見直さない限りずれたまま残ってしまいます。
チェックのタイミングは、組版に入る直前ではなく、原稿の内容確認と並行して行うほうが効率的です。内容の確認と表記のばらつきの確認を別の担当者に分けて進めれば、原稿確定から組版着手までの日数を圧縮できます。
迷ったときの判断表
| 迷いどころ | 判断の目安 |
|---|---|
| 文字を大きくすべきか | 主な読者層の年齢層と、想定する判型のページ数で判断する |
| 縦組みか横組みか | 本文に英数字・図表・データがどれだけ含まれるかで判断する |
| フォントを変えるべきか | 役割(本文・見出し・キャプション)ごとに1つずつ、それ以上は増やさない |
| 紙と電子でレイアウトを揃えるべきか | 揃えようとしすぎず、それぞれの形式に合わせる |
本文の組版は、Amazon KDPへの入稿データを作る工程の中で当社が担当し、読みやすさの基準に沿って行間・文字サイズを設定します。書体の方向性など好みが分かれる部分は、御社にご確認いただきながら進めます。紙の判型については会社の本を紙でも出す、表紙のデザインは会社の本の表紙デザイン、章の始まりのデザインは見出し・章扉デザインの作り方で扱っています。
まとめ
- 文字サイズ・行間・字詰めはセットで調整するもので、どれか1つだけを変えると読みにくくなります。
- 本文・見出し・キャプションなど役割ごとに1つずつフォントを決め、増やしすぎないようにします。
- 縦組みか横組みかは、本文に英数字・図表・データがどれだけ含まれるかで判断します。
- 紙は1ページの見た目を固定できますが、電子書籍のリフローは読者の端末設定に依存します。
- 組版の設定は本文全体で一括管理し、途中で個別に変更しないことが統一感を保つ基本です。
原稿ができた段階から、組版の方針について相談いただけます。