会社の本に写真を入れることは決まったものの、「社内にある写真を使うべきか、ストック素材を買うべきか」で止まってしまう担当者は多くいます。もう一つの不安が著作権です。誰の写真なら自由に使えて、どこからが許諾を取る必要があるのか、境目がはっきりしません。

本記事では、写真という素材そのものの選び方と、著作権上の使用許諾の取り方だけを扱います。写真に写っている人物本人の同意(肖像権)については、別の論点です。 そちらは肖像権の同意の取り方にまとめています。

この記事で分かること:

  • 社内写真・ストック素材・撮り下ろしの3つの選択肢の違い
  • 他人が権利を持つ写真や図版を、許諾なく使える範囲
  • 素材の権利処理で、当社と御社のどちらが何を担当するか

写真の選び方:3つの選択肢

会社の本で使う写真は、おおむね次の3つから選びます。

選択肢 費用 スピード 独自性 向いている用途
社内にある既存の写真 ほぼ0円 速い 高い 社内の実際の様子、過去の出来事
ストック素材 低〜中 速い 低い 汎用的なイメージ写真、背景素材
撮り下ろし(新規撮影) 中〜高 遅い 高い 表紙の象徴的な1枚、代表者や社員の写真

表紙に使う1枚は独自性が問われるため撮り下ろしか、独自性のある社内写真を選ぶ方が仕上がりが安定します。 一方、本文中の場面説明や区切りに使うイメージ写真は、ストック素材で十分なことがほとんどです。表紙のデザイン全体の考え方は会社の本の表紙デザインで扱っています。

社内にある写真を使うときの確認事項

社内の写真を使う場合、実務上まず確認すべきは「誰が、どういう経緯で撮影したか」です。

  • 社員が業務の一環として撮影した写真か、個人のカメラで撮った私的な写真か
  • 外部のカメラマンやデザイン会社に撮影を依頼した写真か
  • 依頼した場合、納品物の利用範囲(本への掲載、表紙への使用、広告への転用など)が契約や発注書に明記されているか

外部のカメラマンに撮影を依頼した写真は、納品時の契約で利用範囲が本文掲載に限定されていることがあります。表紙や広告への転用まで想定するなら、依頼の時点でその範囲を明記してもらうか、掲載前に改めて確認を取ってください。撮影者との取り決めが口頭だけで残っていない場合は、掲載前に一度連絡して確認しておくと、後になって使用範囲をめぐる行き違いが起きにくくなります。

ストック素材を使うときに確認すること

ストック素材はサービスごとに利用条件が異なります。特定の事業者名は挙げませんが、契約前に次の点を確認してください。

確認項目 見るべきポイント
商用利用の可否 会社の書籍・広告物への使用が許可されているか
表紙への使用可否 本文中の使用のみで、表紙は別条件のサービスがある
再配布・二次利用の範囲 電子書籍・紙の本・Webへの転用がすべて含まれるか
ライセンスの種類 買い切りか、期間・回数の制限があるか
クレジット表記の要否 表記が必要な場合、奥付にまとめて書けるか

ライセンス規約は素材ごと・サービスごとに異なるため、本記事では条件を断定しません。 使用前に必ず提供元の公式なライセンス規約を確認してください。

他人の写真・図版を無断で使える範囲:引用の要件

インターネットや書籍で見つけた写真、他社が作成した図表を、許諾を得ずに使えないかと考える場面もあります。ここで関係するのが、著作権法上の「引用」という考え方です。

文化庁の解説によれば、他人の著作物を許諾なく引用として利用するには、次のすべてを満たす必要があります。

要件 内容
公表性 すでに公表された著作物であること
公正な慣行 引用の仕方が公正な慣行に合致していること
正当な範囲 引用の目的上、正当な範囲内であること
主従関係と分量 自分の文章が主で引用部分が従という関係が保たれ、分量が相応であること

記事や図表をまるごと載せる行為は、通常この範囲を超えます。 つまり、見つけた写真や図版をそのまま1枚の完成品として本に転載する使い方は、引用の要件を満たさない可能性が高く、権利者の許諾を得るか、使用をあきらめて自社の素材に差し替える必要があります。

自社で作った図表やグラフを本文に載せる場合も、元データの出典が他社の資料であれば同じ考え方が当てはまります。数値の出典は明記し、図そのものを転載するのか、数値だけを引用して自社で図を作り直すのかを区別してください。

図表・グラフを載せる場合の考え方

写真だけでなく、社内で作成した図表やグラフを本文に載せる場面もあります。考え方は写真と同じです。

  • 数値の出典が自社の集計であれば、著作権上の問題は生じにくい
  • 出典が他社の公表資料や業界団体の統計であれば、数値そのものを引用しつつ、図は自社のデザインで作り直す方法が安全
  • 他社が作成した図をそのまま画像として転載する場合は、写真と同様に引用の要件を満たすか確認する

数値を引用し、見せ方(配色・レイアウト)は自社で作るという切り分けをしておくと、デザインの一貫性も保ちやすくなります。

判断の流れ

写真・図版を使う前に、次の順で確認すると迷いません。

  1. その素材は誰が権利を持っているか(社内・ストック素材の提供元・第三者)を確認する
  2. 社内の素材なら、撮影者との利用範囲の取り決めを確認する
  3. ストック素材なら、商用利用・表紙使用・二次利用のライセンス条件を確認する
  4. 第三者の素材で許諾を得ていないなら、引用の要件を満たすかを検討する
  5. 要件を満たさない、または判断に迷うなら、権利者に許諾を求めるか、使用を見送る

よくある失敗の型

写真の準備でよく見る失敗も、権利そのものより進め方に原因があります。

  • 表紙のデザインが固まってから写真探しを始め、良い素材が見つからず妥協する
  • 社内写真を集めたものの、撮影者が誰か分からず使用の可否を判断できない
  • ストック素材のライセンスを確認せず契約し、後から表紙への使用が対象外だと分かる
  • インターネットで見つけた画像を仮置きのまま入稿データに残してしまう

素材集めは原稿の執筆と並行して早めに始めると、これらの失敗の多くは避けられます。過去の写真を多く扱う社史・記念誌をAIで書くような本では、特に早い段階での素材整理が効いてきます。

当社の対応範囲

当社は、表紙・図版のデザインそのものを担当します。一方で、使用する素材の権利処理は御社にお願いしている範囲です。 社内写真の撮影者への確認、ストック素材のライセンス確認、第三者素材の許諾取得は、御社側で進めていただきます。権利関係が確認できた素材をお渡しいただければ、デザインに反映します。

費用は80万円〜(税抜・表紙デザインを含む)で、図表・表紙デザインを含みます。素材そのものの権利処理費用や許諾料は含まれません。

まとめ

  • 写真は社内写真・ストック素材・撮り下ろしの3択で、独自性を優先するなら撮り下ろしか社内写真を選びます。
  • 社内写真は、撮影者との利用範囲の取り決めを掲載前に確認してください。
  • ストック素材はサービスごとに条件が異なるため、商用利用・表紙使用・二次利用の可否を契約前に確認します。
  • 他人の写真や図版を許諾なく使えるのは、文化庁が示す引用の4要件をすべて満たす場合に限られ、まるごとの転載は通常その範囲を超えます。
  • 素材の権利処理は御社にお願いする範囲で、当社はデザインの制作を担当します。

写真の選び方から権利処理の進め方まで、原稿づくりと並行してご相談いただけます。

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参考情報

※本記事は一般的な説明であり、個別の事案についての法的助言ではありません。判断に迷う場合は権利者への確認、または専門家にご相談ください。