会社の本に社員や取引先の顔写真を載せたい。そう決めても、「本人にどう伝えて、どう同意を取ればトラブルにならないか」で止まってしまう担当者は多くいます。

本記事では、写真に写っている本人から掲載の同意をどう得るかという実務だけを扱います。法律上の要件を断定的に説明するものではなく、実務上の確認事項として整理したものです。 写真という素材そのものの著作権については写真・画像の選び方と権利処理をご覧ください。

この記事で分かること:

  • 掲載の同意を取る基本的な流れ
  • 同意書に入れておきたい項目
  • 退職者・集合写真など、迷いやすいケースへの対応

同意への確認が必要になる場面

会社の本では、次のような場面で本人への確認が必要になります。

  • 社員個人の顔がわかる写真を、社史や採用ブランディングの本に載せる
  • 取引先の担当者が写っている写真を、事例紹介として掲載する
  • 展示会やイベントの様子を撮影した写真に、社外の人物が写り込んでいる
  • 過去に撮影した写真を、撮影当時とは違う用途(社外配布の本)に転用する

社内向けの資料で使っていた写真だからといって、社外に配る本でもそのまま使えるとは限りません。 用途が変わる時点で、改めて確認する機会を設けることをおすすめします。

同意を取る基本的な流れ

トラブルを避けるための基本的な流れは次のとおりです。

  1. 撮影前に、写真の使い道(社外に配布する書籍であること)を伝えておく
  2. 撮影する
  3. 掲載候補の写真を本人に見せ、使ってよいか確認する
  4. 同意の内容を書面(同意書やメールでのやり取り)で残す
  5. 印刷・公開の前に、最終的な掲載箇所を改めて共有する

撮影前に用途を伝えておくと、撮影後に個別確認する際の心理的なハードルが下がります。 撮影の段階で何も説明がないまま後日「本に載せます」と伝えると、本人が戸惑いやすくなります。

同意書に入れておきたい項目

同意書やそれに代わる書面には、次の項目を入れておくと、後日の行き違いを防ぎやすくなります。

項目 内容
掲載媒体の範囲 紙の書籍・電子書籍・Web掲載・広告など、どこまで使うか
使用期間 期限を設けるか、無期限とするか
二次利用の可否 発売後の販促物やSNSでの再使用を含めるか
氏名・役職の掲載可否 写真とあわせて氏名や役職を出すかどうか
修正・加工の可否 トリミングや色調整の範囲まで含めるか
同意の撤回 撤回したい場合の連絡先と、対応にかかる期間の目安

とくに二次利用の範囲は見落としやすい項目です。 書籍への掲載だけ同意を得て、発売後の広告やSNS投稿にも同じ写真を使う場合は、その範囲も含めて確認しておく必要があります。

迷いやすいケース

実務でよく相談されるのが、次のようなケースです。

ケース 対応の目安
退職者の写真 在職中の同意が退職後も有効かは同意書次第。退職・異動が分かった時点で改めて確認する
取引先担当者の異動 異動先が分かれば連絡し、掲載を続けてよいか確認する
集合写真で一部の同意が得られない 全員の同意が前提。得られない場合は使用を見送るか、モザイク処理や差し替えで対応する
背景に写り込んだ一般の人 本人が特定できる場合は、可能な範囲で連絡するか、モザイク処理を検討する
未成年者が写る場合 保護者からの同意もあわせて得ておく

社史や周年記念誌のように、長い年月の写真を扱う本では、退職者や異動者の扱いが特に発生しやすくなります。この点は社史・記念誌をAIで書くでも触れています。

取引先の写真を掲載する場合の追加の配慮

取引先の担当者や代表者が写る写真は、社員の写真よりも一段階、確認の手間がかかります。相手の会社にも広報や法務の窓口があり、対外的な情報発信について社内ルールを持っていることがあるためです。

  • 掲載の依頼は、写真の当事者本人だけでなく、相手先の広報窓口にも一報を入れる
  • 相手先の会社名・役職名の表記が、相手の希望する表記と一致しているか確認する
  • 掲載後の使い回し(発売後の広告やSNSでの再掲載)を想定しているなら、その範囲もあわせて伝える

個人への確認だけで進めてしまい、後から相手先の広報部門から確認を求められるというつまずきが起こりやすい場面です。取引先が絡む写真は、依頼のタイミングを早めに設定してください。

同意取得のタイミングを逃しやすい場面

同意取得の抜け漏れは、撮影そのものより「写真の使い回し」の場面で起こりやすくなります。

  • 過去の周年行事や社内報のために撮影した写真を、今回の書籍用に転用する
  • 外部のカメラマンやイベント会社が撮影した写真を、後日まとめて受け取って使う
  • 展示会やセミナーの会場で、来場者が偶然写り込んだ写真を使う

いずれも「撮影時点では書籍への掲載を想定していなかった」写真です。撮影時の目的と、実際に使う目的が変わる場合は、あらためて確認を取る機会を設けてください。 撮影から時間が経っているほど、本人への連絡が後回しになりやすいため、写真素材を集める段階でリストを作り、確認状況を記録しておくと運用が安定します。

同意が得られない場合の対応

本人から同意が得られない、または連絡が取れない場合は、無理に掲載を進めない方が安全です。代わりに次のような対応を検討します。

  • 該当の人物にモザイクやぼかし処理を加える
  • その写真自体を、同意が得られた別の写真に差し替える
  • 撮り直しが可能なら、改めて撮影の機会を設ける
  • 掲載範囲を絞り、当初想定していた広告・SNSへの二次利用は見送る

「連絡が取れないから掲載してしまう」という判断は避けてください。 後日連絡が取れたときに、掲載していた事実自体が問題になる可能性があります。

社内での運用の型

同意取得を個別対応任せにすると、担当者によって確認の粒度がばらつきます。あらかじめ次のような型を用意しておくと運用が安定します。

  • 同意取得の責任者を1人(または1部署)に決める
  • 撮影と同意確認をセットにした社内フローを作る
  • 同意書のひな形を用意し、案件ごとに項目を追加・削除する形にする
  • 取得した同意の記録(誰の、いつの、どの範囲の同意か)を一覧で保管する

よくある失敗の型

同意取得でよく見る失敗も、進め方に原因があることがほとんどです。

  • 撮影時に用途を伝えず、掲載直前になって本人に相談し断られる
  • 同意を口頭だけで済ませ、後日「そんな話は聞いていない」と行き違いになる
  • 退職者の写真をそのまま使い続け、本人から削除を求められて刷り直しが発生する
  • 集合写真の一部だけ同意が得られていないまま、確認を後回しにして印刷直前に発覚する

撮影と同意確認をセットにし、書面で記録を残す運用にしておくと、これらの失敗の多くは避けられます。

当社の対応範囲

当社は、写真の選定や表紙・図版のデザインを担当します。一方で、写真に写っている本人からの同意取得は御社にお願いしている範囲です。 社内の関係者や取引先への説明は、日頃から接点のある御社の担当者が窓口になる方が、本人の納得を得やすいためです。同意書に入れる項目の整理や、迷いやすいケースへの考え方の相談にはお応えします。

まとめ

  • 社員や取引先の写真を本に載せる際は、社内利用とは別に、書籍掲載としての同意を個別に確認することをおすすめします。
  • 同意書には、掲載媒体の範囲・使用期間・二次利用の可否・氏名の扱い・撤回の連絡先を入れておきます。
  • 退職者・異動者・集合写真・写り込みなど、迷いやすいケースはあらかじめ対応の目安を決めておきます。
  • 同意が得られない場合は、モザイク処理や差し替えなど、掲載しない方向での対応を優先します。
  • 本人からの同意取得は御社にお願いする範囲で、当社は写真の選定とデザインを担当します。

同意書の項目整理や、迷いやすいケースの考え方についてはご相談いただけます。

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※本記事は一般的な説明であり、個別の事案についての法的助言ではありません。判断に迷う場合は本人への確認、または専門家にご相談ください。