実績や調査データを本に載せたいと考える会社は多いものの、いざグラフを作ってみると「情報が多すぎて何を伝えたい図か分からない」状態になりがちです。逆に、シンプルにしすぎて説得力が弱い図になることもあります。
図表は、正しく作れば文章より速く伝わる一方、作り方を誤ると読者を止めてしまいます。本記事では、本に載せる図表の種類選びと見せ方だけを扱います。
この記事で分かること:
- データの性格に合った図表の種類の選び方
- かえって読みにくくなる図表の典型パターン
- モノクロ印刷を前提にした配色の注意点
図表を載せる前に「伝えたい一言」を決める
図表を作る前に、「この図で読者に何を1つだけ伝えたいか」を言葉にしておきます。この一言が決まらないまま数値をグラフ化すると、軸や凡例は正しくても、何を見ればよいか分からない図になります。
たとえば「取引先数が右肩上がりに増えている」と伝えたいなら、伸びが分かる折れ線グラフで十分です。内訳の細かい比率まで同時に見せようとすると、かえって主旨がぼやけます。1つの図には1つの主張、が基本です。伝えたいことが2つある場合は、1つの複雑な図にまとめるより、図を2つに分けたほうが、それぞれの主張がはっきり伝わります。
データの性格で図表の種類を選ぶ
| 伝えたい内容 | 向いている図表 | 避けたほうがよい図表 |
|---|---|---|
| 時間の推移・伸び | 折れ線グラフ | 円グラフ(推移が見えない) |
| 項目同士の比較 | 棒グラフ | 3D化した棒グラフ(高さが読み取りにくい) |
| 全体に対する構成比 | 帯グラフ・円グラフ(項目が少ない場合) | 項目数が多い円グラフ |
| 手順・工程の流れ | フローチャート | 表(順序が伝わりにくい) |
| 詳細な数値の一覧 | 表 | グラフ(細かい数字は逆に読みにくい) |
構成比を見せたい場合でも、項目数が6つ、7つと増えるほど円グラフは読みにくくなります。項目数が多い場合は、上位の項目だけを取り出すか、帯グラフや表に切り替えたほうが伝わります。迷ったときは、まず表で数字を確認し、そのうえで図にする必要が本当にあるかを判断する順番をおすすめします。
かえって読みにくくなる典型パターン
図表を「作り込みすぎる」ことで、逆に伝わりにくくなるケースがよくあります。
- 3D加工や過度な装飾:高さや面積が正確に読み取れなくなります。
- 凡例が図から離れた場所にある:読者が視線を往復させる負担が増えます。
- 色数が多すぎる:6色を超えるあたりから、どの色が何を指すか覚えていられなくなります。
- 軸の目盛りを省略する、または途中から始める:変化を実際より大きく、あるいは小さく見せてしまいます。
- 1つの図に複数の主張を詰め込む:結局どれも印象に残りません。
これらはどれも「凝った図表を作ろう」とした結果、逆効果になっているパターンです。装飾より、主張が一目で伝わるかどうかを優先してください。図表の完成度を確認するときは、作った本人ではなく、その数値の背景を知らない第三者に一度見せて、意図どおりに読み取れるかを確認する方法も有効です。
モノクロ印刷を前提にした配色の注意
会社の本は、印刷コストを抑えるためにモノクロ印刷の本文を選ぶケースが少なくありません。Amazon KDPのペーパーバックでは、カラー印刷はモノクロ印刷より印刷コストが高くなる仕様です。
| 印刷方式 | 印刷コストの傾向 |
|---|---|
| モノクロ(白/クリーム色の用紙) | 24〜110ページで1冊あたり422円、110ページ超は1冊あたり206円+1ページあたり2円 |
| スタンダードカラー | 72〜600ページで1冊あたり206円+1ページあたり3.50円 |
| プレミアムカラー | 42〜828ページで1冊あたり206円+1ページあたり4円 |
モノクロ印刷を選ぶ場合、画面上でカラーで作った図表は、印刷時にグレーの濃淡に変換されます。色分けだけに頼った図表は、印刷すると似た濃さのグレーが並んでしまい、区別がつかなくなることがあります。線種(実線・破線・点線)やハッチング(斜線・網掛け)など、色以外の要素でも区別できる形で作っておくと、モノクロで印刷しても情報が失われません。
図表の点数は入れすぎない
伝えたいことが多いほど、図表を増やしたくなりますが、1章に図表を詰め込みすぎると、文章を読むリズムが途切れ、逆に内容が頭に入りにくくなります。1つの章で本当に図表が必要な箇所を2〜3か所に絞り、それ以外は文章で簡潔に説明するほうが、全体として読みやすい本になります。図表を何点入れるかは、その章に割り当てた文字数とのバランスで決めてください。
実績・データを見せるときの表現
実績を図表で見せる際は、社外に出せる範囲のデータかどうかを事前に確認してください。取引先や顧客の反応を紹介する場合、具体的な社名や、業種から個社が推測できる形での紹介は避け、属性を大くくりにして扱うのが安全です。数値そのものについても、根拠となる資料が手元にあるものだけを図にしてください。
単位と凡例の書き方
図表そのものの形式だけでなく、単位や凡例の書き方でも伝わりやすさは変わります。「件」「%」「万円」といった単位を軸のタイトルに明記せず、数字だけを並べた図表は、読者が意味を誤解する原因になります。凡例も、図の外側に小さく置くのではなく、可能であれば図の中の該当する線や棒のすぐそばに直接ラベルを添えると、視線の移動が減り読みやすくなります。
図表の下に添えるキャプション(説明文)も見落とされがちです。「この図から何が読み取れるか」を一文で書き添えておくと、グラフを読み解く時間がない読者にも要点が伝わります。図だけを大きく載せて説明を省く作り方は、丁寧に見えて実は不親切な場合があります。
AIに図表のたたき台を作らせる場合の注意
AIに図表の構成案を作らせることは、たたき台としては有効です。ただし、元になる数値や単位が正しいかどうかは、必ず人が原本の資料と突き合わせて確認する必要があります。AIは見た目の整った図を作ることは得意でも、数値の出典までは保証してくれません。装飾の調整に時間をかけるより、数値確認を優先してください。
当社の対応範囲
当社の料金には図表・表紙デザインが含まれており、いただいたデータをもとに、本の判型や印刷方式(モノクロ・カラー)に合わせた図表に仕上げます。数値の正確さの確認や、社外に出してよいデータかどうかの判断は御社にお願いする範囲です。表紙のデザインについては会社の本の表紙デザイン、紙で出す場合の印刷方式については会社の本を紙でも出す、AIによる執筆全体の流れはAIを活用した企業出版とは?にまとめています。図表の分量は章の文字数配分にも影響するため、会社の本の文字数配分の決め方もあわせてご覧ください。
まとめ
- 図表を作る前に「この図で何を1つだけ伝えたいか」を決めます。
- データの性格(推移・比較・構成比・手順・詳細)に合わせて図表の種類を選びます。
- 3D加工、離れた凡例、色数の多さ、軸の省略は、かえって伝わりにくくなる典型パターンです。
- モノクロ印刷では色の違いがグレーの濃淡になるため、線種やハッチングでも区別できる形にします。
- AIに下書きを作らせてもよいですが、数値の正確さの確認は必ず人が行います。
データをどう見せれば伝わるか、原稿と合わせてご相談ください。
参考情報
- Amazon KDP ペーパーバックの印刷コスト(2026-09-19確認)— モノクロ印刷は24〜110ページで1冊422円、110ページ超は1冊206円+1ページ2円。スタンダードカラーは72〜600ページで1冊206円+1ページ3.50円、プレミアムカラーは42〜828ページで1冊206円+1ページ4円。