初めて会社の本を作る担当者から、「奥付に何を書けばいいのか分からない」という相談をよく受けます。書名や本文は決まっても、巻末の1ページだけ手が止まる、というケースです。

奥付そのものの書式を細かく定めた法律があるわけではありません。ただし、記載する項目の一部は、ISBNや納本制度といった他の制度と直接つながっています。 ここを押さえていないと、あとから表記の食い違いに気づいて作り直す事態になります。この記事では、奥付に何を、どんな順で書くのが一般的かを整理します。

この記事で分かること:

  • 奥付に一般的に記載する項目とその役割
  • 発行者名・発行日など、他の制度と関わる項目はどれか
  • 自社ISBNとKDPの無料ISBNで、発行者の表示がどう変わるか

奥付とは何か

奥付は、本の巻末に置く、書誌情報をまとめたページです。書名・著者・発行者・発行日・ISBNなどをまとめて記載する、日本の出版物で広く使われている慣行です。

奥付の書式そのものを一律に定めた特定の法律はありません。 そのため、掲載する項目や順番には多少の幅があります。一方で、記載する内容の一部は、ISBNの登録情報や納本制度の期限など、他の制度に直接影響します。ここが「慣行だから自由」と考えて後回しにできない理由です。

奥付に一般的に記載する項目

会社の本で一般的に記載される項目は、次のとおりです。

項目 内容 関連する制度・注意点
書名 表紙と一致させる正式な書名 版を重ねる場合は版表示と合わせる
著者名 個人名または会社名 KDP入稿情報・ISBN登録情報と一致させる
発行者 発行の主体(会社名・代表者名) ISBN登録時の出版社名、KDPの表示と関わる
発行日 発行(公開)した日付 納本制度の30日以内という期限の起点になる
版・刷の表示 初版第1刷など 増刷・改訂時に更新する
ISBN 978-4から始まる書誌コード 自社取得の場合は登録情報と一致が必須
印刷者 印刷を行った会社名 印刷会社から指定がある場合が多い
定価 本体価格(税別表示が一般的) 電子書籍のみの場合は省略することもある

この中で特に注意が必要なのは、発行者・発行日・ISBNの3項目です。 単独で決めるのではなく、他の手続きと一致させる必要があるためです。

版・刷の表示が示すもの

奥付にはよく「初版第1刷発行」のような表示が入ります。一般的には、内容を変更せずに同じ版を再び印刷した場合は「刷」を、内容に手を入れた場合は「版」を改めるという使い分けがされています。会社の本でも、誤字の修正だけなら刷を、社名変更や統計データの更新など内容に関わる修正を行った場合は版を改める、という整理をしておくと、あとで「どの版の記述か」を追いやすくなります。

発行者の表記でつまずきやすい点

ISBNを自分で取得する場合、ISBN登録時に届け出た出版社名・著者名・書名と、KDPに入力する情報を一致させる必要があります。 一致しないと出版できません。

ここで実際に起きやすい失敗が、表記ゆれです。 「株式会社」を前に付けるか後ろに付けるか、英語表記のスペルや略称、部署名を含めるかどうか。ISBN登録・奥付・KDP入稿の3か所で同じ表記を使っていないと、あとから食い違いに気づいて登録をやり直すことになります。奥付の発行者欄は、この3か所の表記を最初に揃える基準にするという考え方で決めると、手戻りを防げます。

一方、KDPの無料ISBNを使う場合は事情が異なります。 KDPの無料ISBNでは、出版社の表示が自動的に「個人出版」になります。奥付には会社名を発行者として記載して構いませんが、KDPの管理画面上の表示とは異なる、という点は社内で事前に共有しておくべきです。自社ISBNとKDPの無料ISBNのどちらを選ぶべきかは、自社でISBNを取るか、KDPの無料ISBNで済ませるか、流通範囲で選ぶで判断基準を整理しています。

状況 奥付の発行者欄 KDP上の出版社表示
自社ISBNを取得している ISBN登録情報と一致させた会社名 登録した会社名(KDP入稿情報と一致させる)
KDPの無料ISBNを使う 会社名を記載して差し支えない 「個人出版」と表示される

発行日の決め方

発行日は、実際に発行(公開)する日を記載するのが一般的です。ここで見落としやすいのが、発行日が納本制度の期限の起点になるという点です。国立国会図書館への納本が必要な場合、民間出版物は発行の日から30日以内に納入することとされています。

つまり、奥付に書く発行日と、実際の販売開始日・納本の期限は連動しています。印刷や公開のスケジュールを組む段階で、矛盾のない日付を選んでください。納本制度の詳しい対象範囲は会社の本はなぜ国立国会図書館に納めるのか、納本制度の仕組みで解説しています。

ISBNの記載

ISBNは「978-4(国・地域)-出版者記号-書名記号」という構造の、発行形態別・1書名ごとの固有コードです。奥付にはこのISBNをそのまま記載します。バーコードにする場合は、日本図書コードの文字情報を2段のバーコードで表した書籍JANコードとして表紙などに表示します。

ISBNと書店流通の関係はISBNと書店流通の基礎|会社の本が「どこで買えるか」を決める仕組みにまとめています。

当社の対応範囲

当社の編集工程では、奥付に記載する項目の案を作成し、書名・版表示・ISBNの記載方法についてはご提案します。ただし、発行者名や代表者名といった正式な情報の確定は御社にお願いしています。 自社ISBNを取得される場合は、ISBN登録情報・奥付・KDP入稿情報の3か所で表記を統一する作業も、御社と当社で確認しながら進めます。

費用や工程全体の内訳は企業出版の費用は何にかかる?見積書の内訳と実費の目安をご覧ください。

まとめ

  • 奥付は書名・著者・発行者・発行日・版表示・ISBN・印刷者などをまとめる、出版業界の慣行として広く使われるページです。
  • 発行者名は、自社ISBNを取得する場合、ISBN登録情報・奥付・KDP入稿情報の3か所で表記を一致させる必要があります。
  • KDPの無料ISBNを使うと、KDP上の出版社表示は「個人出版」になりますが、奥付の発行者欄には会社名を記載できます。
  • 発行日は納本制度の30日以内という期限の起点になるため、実際のスケジュールと矛盾しない日付にします。
  • 表記ゆれによる不一致は、あとから出版がブロックされる典型的な失敗の型です。最初に基準を決めておくと防げます。

奥付の項目案作成から、表記統一の確認まで、御社の状況に合わせて進めます。

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参考情報

※本記事は一般的な説明であり、個別の事案についての法的助言ではありません。