少部数で会社の本を刷りたいとき、印刷方法の選択肢として「オンデマンド印刷」と「オフセット印刷」という言葉が出てきます。名前だけ聞いても違いが分からず、見積もりの比較でつまずく担当者は少なくありません。

本記事では、この2つの印刷方式そのものの違いと選び方だけを扱います。紙で出すべきかどうかの判断や、KDPペーパーバックの使い方会社の本を紙でも出すで解説していますので、そちらもあわせてご覧ください。

この記事で分かること:

  • オンデマンド印刷とオフセット印刷、それぞれの仕組みの違い
  • 部数によってどちらが有利になりやすいかの考え方
  • 品質・増刷のしやすさで見るべき違い

2つの印刷方式の違い

まず全体像を整理します。

比較項目 オンデマンド印刷 オフセット印刷
版の有無 版を作らず、データから直接印刷する 印刷用の版を作ってから刷る
初期費用 ほぼ不要 版代がかかる
部数と単価の関係 部数によらずほぼ一定 部数が増えるほど単価が下がりやすい
少部数での単価 相対的に安い 相対的に高くなりやすい
色の再現性 機種・仕様による 高く、安定しやすい
納期 注文ごとに短時間で対応できることが多い 版の作成が入る分、準備期間が必要
増刷・差し替え 1冊単位でデータを差し替えやすい 版を作り直すコストと時間がかかる

版を作るかどうかが、費用構造の分かれ目です。 オフセットは版という初期投資をかけて1冊あたりの単価を下げる方式、オンデマンドは初期投資をかけない代わりに単価がほぼ変わらない方式と理解すると整理しやすくなります。

オンデマンド印刷とは

オンデマンド印刷は、注文が入るたびに1冊ずつデータから直接印刷する方式です。版を作らないため、少部数でも1冊あたりの単価がほぼ変わりません。

Amazon KDPのペーパーバックはこの方式です。注文が入るたびに印刷されるため、前払いの印刷費も在庫も発生しません。Amazon.co.jpでの印刷コストは、モノクロ印刷(白/クリーム色の用紙)で24〜110ページが1冊あたり422円、110〜828ページが1冊あたり206円+1ページあたり2円です。カラー印刷はこれより高くなります。

選べる判型もあらかじめ用意された選択肢の中から選ぶ形で、四六判・A5判・B5判など複数のサイズがあります。判型の自由度は後述のオフセットに比べて限られますが、その分、入稿から販売開始までの手続きは単純です。

オフセット印刷とは

オフセット印刷は、印刷用の版を作ってから、その版でまとめて刷る方式です。版を作る工程が入るため、1冊だけを刷るのには向きません。一方で、版を作ってしまえば、そこから先は1冊あたりの単価が下がっていきます。

版代や刷版の費用は印刷会社の設備や仕様によって幅が大きいため、本記事では金額を書きません。 検討する際は、想定する部数を伝えたうえで、複数の印刷会社から見積もりを取って比較してください。

用紙の種類や特殊な加工(箔押し・PP加工など)を選べる幅が広いことも、オフセットの特徴です。装丁にこだわりたい本ほど、オフセットが選択肢に入りやすくなります。

部数でどちらが有利か変わる

版代という初期費用がかかるかどうかが分かれ目のため、部数が少ないほどオンデマンドが有利、部数が多いほどオフセットが有利という関係になりやすい、というのが基本の考え方です。

想定部数の目安 相性がよい方式 理由
数冊〜数十冊 オンデマンド 版代をかけずに必要な分だけ刷れる
数百冊程度 どちらも検討の余地あり 見積もりを取って単価と初期費用の合計で比較する
1,000冊以上 オフセット 版代を含めても1冊あたりの単価が下がりやすい

何冊から逆転するかは印刷会社と仕様によって異なるため、本記事では冊数を断定しません。 見積もりの段階で、同じ仕様・同じ部数で両方式の金額を並べて比較することをおすすめします。

品質面での違い

色の再現性は、一般にオフセットの方が安定しやすいとされます。写真や図版が多い本、色味を厳密に管理したい表紙では、この点が選択の材料になります。

判型や用紙の自由度も異なります。KDPのオンデマンド印刷は選べる判型があらかじめ決まっているのに対し、オフセットは印刷会社が対応できる範囲で仕様を指定できます。特殊な判型や用紙にこだわる場合は、対応できる印刷会社を探す工程が加わります。

増刷・改訂のしやすさ

出版後に誤りが見つかった場合や、内容を更新したい場合の対応のしやすさも異なります。

オンデマンド印刷は、データを差し替えれば次の注文分から新しい内容で印刷されます。オフセット印刷は、増刷のたびに版を作り直すか、既存の版を流用できるかを確認する必要があり、変更が大きいと作り直しの費用と時間がかかります。頻繁に内容を更新する可能性がある本は、この点もあわせて検討してください。

見積もりを比較するときの確認項目

複数の印刷会社やAmazon KDPの条件を並べて比較する際は、単価だけでなく次の項目もあわせて確認してください。

確認項目 見るべきポイント
単価に含まれる範囲 用紙代・印刷代・製本代がすべて含まれているか
最低発注部数 オフセットは最低ロットが設定されていることが多い
納期 版の作成から刷り上がりまでの日数
色校正の有無 印刷前に色味を確認できる工程があるか
追加発注のしやすさ 発売後に部数が足りなくなった場合、同じ条件で追加できるか

単価の安さだけで選ぶと、最低発注部数の多さや納期の長さで後から調整が利かなくなることがあります。 展示会や周年行事など日程が決まっている用途では、納期の確実さも比較の軸に加えてください。

当社の対応

当社では、Amazon KDPへの入稿代行(電子書籍・ペーパーバック)と、少部数の印刷・製本に対応しています。手渡し用にまとまった部数が必要な場合の印刷方法は、想定部数と用途をうかがったうえでご提案します。

費用は80万円〜(税抜・表紙デザインを含む)です。書店流通、書店営業、倉庫・在庫管理は含みません。書店流通を含む展開についてはISBNと書店流通の基礎、費用の内訳全体については企業出版の費用は何にかかるかをご覧ください。

よくある失敗の型

印刷方式の選び方でよく見る失敗も整理しておきます。

  • 見積もりを1社しか取らず、単価が相場並みか判断できないまま発注する
  • 展示会の日程が決まっているのに、版の作成期間を考慮せずオフセットで発注し納期に間に合わない
  • 少部数のつもりが増刷を重ね、結果的にオフセットの方が安かったと後から気づく
  • 色の再現性を確認せず入稿し、刷り上がりの色味が想定と違っていた

想定部数と納期の両方が固まってから見積もりを取ると、これらの失敗の多くは避けられます。

まとめ

  • オンデマンド印刷は版を作らずデータから直接印刷し、部数によらず単価がほぼ一定です。
  • オフセット印刷は版を作ってからまとめて刷る方式で、部数が増えるほど単価が下がりやすくなります。
  • Amazon KDPのペーパーバックはオンデマンド印刷で、在庫や前払いの印刷費が発生しません。
  • 少部数はオンデマンド、大部数はオフセットが相性がよい傾向がありますが、何冊で逆転するかは見積もりで確認してください。
  • 増刷や内容更新の頻度も、方式選びの判断材料になります。

想定する部数と用途から、どちらの方式が合うか一緒に整理します。

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参考情報

  • Amazon KDP ペーパーバックの印刷コスト(2026-09-19確認)— Amazon.co.jpのモノクロ印刷(白/クリーム色の用紙)は24〜110ページで1冊422円、110〜828ページで1冊206円+1ページ2円。注文の都度印刷されるため在庫は発生しない。
  • Amazon KDP 印刷オプション(2026-09-19確認)— Amazon.co.jp向けに選べる判型の一覧と、多くの判型で24〜828ページというページ数の範囲。