AIに下書きを書かせたあと、そのまま著者(経営者など)に見せると、事実誤認や言い回しの違和感で差し戻され、修正のやり取りが何度も発生することがあります。

この手戻りの多くは、著者に見せる前の自分自身でのチェックで防げます。本記事では、著者確認や編集者への引き渡し前に、執筆担当者自身が使う確認項目だけを扱います。文章の読みやすさや話の展開そのものの直し方は会社の本の推敲の観点で扱っているため、ここではチェックリストの作り方に絞ります。

この記事で分かること:

  • セルフレビューに入れるべき4つのカテゴリ
  • カテゴリごとの具体的な確認項目
  • チェックリストの運用方法(誰が、いつ、どう記録するか)

なぜセルフレビューが必要か

AIに書かせた原稿には、人が最初から書いた原稿とは違う種類の見落としが起きます。文章として自然に読めてしまうため、事実誤認や根拠のない記述が混ざっていても、著者や編集者が読むまで気づかれにくいという特徴があります。AIによる執筆全体の流れはAIで企業出版するには?で整理しています。

執筆担当者自身が渡す前に確認しておくことで、著者からの差し戻しや、AI原稿ならではの手戻りを減らせます。たとえば、AIが「創業から10年で取引先が3倍に増えた」というような具体的な数字を、根拠なく生成してしまうことがあります。文章としては自然に読めるため、執筆担当者自身が一度立ち止まって「この数字はどこから来たか」を確認しないと、そのまま著者確認まで進んでしまいます。著者がその場で数字の誤りに気づけば差し戻しで済みますが、気づかないまま公開されれば、あとから訂正が必要になります。

チェックリストに入れる4つのカテゴリ

カテゴリ 見るもの
事実 数字・固有名詞・年号・エピソードの内容が事実と合っているか
整合性 インタビューで聞いた内容と原稿の記述が食い違っていないか
表現 社外に出せない表現、競合への言及、誇大な言い回しが入っていないか
体裁 依頼した構成・文字数・章立てどおりになっているか

この4つは役割がそれぞれ異なるため、1つのチェックリストにまとめて上から順に確認するより、カテゴリごとに項目を分けて確認するほうが漏れにくくなります。

見落としが起きやすい状態と、確認済みと言える状態の違いを、カテゴリごとに例で示します。

カテゴリ 見落としが起きやすい状態 確認済みと言える状態
事実 数字やエピソードを原稿の記述のまま信じている 出典(取材メモ・資料)を自分で指し示せる
整合性 章ごとに読んで「間違っていなさそう」で終える 章をまたいだ同じ話題を並べて突き合わせている
表現 誇大な言い回しを「勢いがあって良い」と流している 断定表現ごとに根拠の有無を確認している
体裁 完成した原稿を通しで読んで満足している 依頼時の構成表と見出しを1つずつ照合している

「見落としが起きやすい状態」は、一見すると確認したつもりになれてしまう点が共通しています。チェックリストは、この錯覚を防ぐために作ります。

事実面の確認項目

  • 社名・製品名・役職名・年号などの固有名詞に誤りがないか。
  • 数字(実績・件数・年数など)の出典を自分で説明できるか。
  • 出典を説明できない数字やエピソードは、誰が書いたかを問わず、一度削除するか要確認の印をつける。

生成AIは、それらしい数字やエピソードを事実であるかのように書いてしまうことがあります。自分が取材や資料で確認していない記述は、そのまま残さないでください。特に「約」「多くの」「業界で初めて」といった曖昧な表現がついた数字や主張は、根拠を確認せずに通してしまいやすいため注意してください。

整合性の確認項目

  • インタビューメモや録音と、原稿の発言部分を突き合わせたか。
  • 章をまたいで同じ話をしているのに、内容が微妙に食い違っていないか。
  • 前の章で「後述します」と書いた話が、実際にあとの章で説明されているか。

たとえば、創業のエピソードを1章と5章の両方で触れている場合、片方では「取引先の紹介がきっかけ」、もう片方では「展示会での出会いがきっかけ」のように、細部が食い違って書かれることがあります。AIは章ごとに生成することが多いため、こうした食い違いは章単位のチェックだけでは見つかりません。同じ話題が複数の章にまたがっていないかを、先に洗い出してから読み比べてください。

表現面の確認項目

  • 社内でしか通じない略語・専門用語が言い換えられているか、あるいは注釈があるか。
  • 他社を名指しで批判・比較する記述がないか。
  • 裏付けのない断定表現が、確認しないまま残っていないか。

AIは文章を勢いよく仕上げる傾向があるため、「業界随一の」「圧倒的な」といった強い表現を、根拠を示さないまま使うことがあります。読んだ印象が良いために見過ごされやすい箇所なので、断定的な表現が出てきたら、その都度「何を根拠にそう言えるか」を自分に問い直してください。答えられない場合は、表現を弱めるか、具体的な事実に置き換えます。

体裁面の確認項目

  • 依頼した章構成・見出しの数と一致しているか。
  • 目標の文字数から大きく外れていないか(極端に短い・長い章がないか)。
  • 各章の見出しが、実際の内容を言い表しているか。

体裁の確認は事実確認より軽く見られがちですが、依頼した構成と大きくずれた原稿を著者に見せると、内容以前に「指示が伝わっていない」という印象を与えてしまいます。内容を細かく読み込む前に、まず構成表と見出しを並べて照合する習慣をつけてください。目標の文字数からのずれは、1章あたり2割を超えたら理由を説明できるようにしておくと、著者から聞かれたときにも即答できます。

チェックリストの運用方法

チェック項目は、章ごとに一覧表にして、確認した日付と担当者名を残す形にすると、どこまで見たかが後から分かります。特に複数人で分担して執筆した場合、誰がどの章を確認済みかが曖昧になりやすいため、記録を残す運用をおすすめします。表計算ソフトで「章名・カテゴリ・確認日・担当者・備考」の列を作るだけでも十分です。特別なツールを新たに導入する必要はありません。

自分で答えられない・違和感がある箇所は、削除するのではなく、原稿に印(コメント機能など)を残したまま著者や編集者に引き渡してください。分からない箇所を分からないまま渡すことは間違いではありません。分からないまま「それらしく」書き直すことのほうが、後で問題になります。印をつける際は「確認したいこと」を一言添えておくと、著者や編集者がその場で判断しやすくなります。

当社の場合

当社のAI書籍出版代行では、AIによる執筆のあとにプロ編集者が品質確認を行い、事実関係や整合性の確認を進めます。ただし、取材内容の正確な記録や、社内でしか判断できない事実の裏付けは、当社では確認しようがないため、御社にご確認をお願いする範囲です。費用は80万円〜(税抜・表紙デザインを含む)で、この編集者による品質確認までを含みます。

章立てそのものの作り方は会社の本の目次・章立ての作り方にまとめています。チェックリストの運用に慣れてきたら、事業内容や章の性質に合わせて項目をカスタマイズしても構いません。

まとめ

  • セルフレビューは、著者や編集者に渡す前の手戻りを減らすための、執筆担当者自身の確認工程です。
  • チェックリストは事実・整合性・表現・体裁の4カテゴリに分けると漏れにくくなります。
  • 出典を説明できない数字やエピソードは、そのまま残さず削除するか確認の印をつけます。
  • 依頼した構成・文字数どおりかという体裁面の確認も、事実確認と同じくらい重要です。
  • 分からない箇所は分からないまま印をつけて引き渡すほうが、それらしく書き直すより安全です。

セルフレビューの体制づくりから、一緒に整理することもできます。

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