本一冊分の原稿を一度にAIへ書かせると、前半と後半で登場人物の呼び方が変わったり、すでに説明した内容をもう一度説明したりすることがあります。原因は分量ではなく、AIが一度に保持できる文脈には限りがあることです。

対策は、原稿を適切な単位に分割し、章をまたいで守るべき情報を先に固定してから書かせることです。本記事では、どの単位で分けるか、何を固定するか、分割した原稿を破綻させずにつなぐ手順を具体的に扱います。

この記事で分かること:

  • 一括で書かせると内容がぶれる仕組み
  • 章単位・項単位、どちらで分割すべきかの判断基準
  • 分割前に固定する情報と、つなぎ目でつまずきやすい失敗の型

一括で書かせると内容がぶれる理由

AIは指示と生成した文章をすべて踏まえて次の文章を作ります。原稿が長くなるほど、前半で決めた設定(固有名詞の表記、語尾、エピソードの詳細)が後半の生成に反映されにくくなります。

とくに崩れやすいのは次の3点です。

  • 人物・組織の呼び方(「同社」「当社」「弊社」が章ごとに混在する)
  • すでに書いたエピソードの重複、または矛盾する形での再登場
  • 章の冒頭と終わりで話の熱量や具体性の水準が変わる

一括生成でこれを防ぐのは難しく、分割して都度確認する前提で進めるほうが現実的です。

章単位か項単位か、分割の粒度を決める

分割の粒度は、本の性格によって向き不向きがあります。

分割の単位 向いている原稿 注意点
章単位(1回で1章、数千〜1万字程度) 章ごとに話題が独立している本(社史、事例集) 章内の前半と後半でも軽いぶれが起きうる
項(見出し)単位(1回で見出し1〜2個分) 論理展開が続く本(経営者の考え方を通して語る本) 生成回数が増え、つなぎ目の確認箇所も増える
章をさらに機能で分割(導入・本論・まとめを別生成) 1章が長く、内部でも文脈が保持しにくい章 3つのパーツを後で結合する作業が必要になる

話題が章ごとに完結する本は章単位、話の筋が章をまたいで続く本は項単位に寄せる、というのが基本の考え方です。迷う場合は、1章の中でも「ここで話が切り替わる」という箇所を先に洗い出し、そこを分割の候補にしてください。

1回に渡す分量の目安

1回の生成で渡す原稿の分量が多すぎると、その回の中でも前半と後半で密度が変わります。目安として、1回の生成は原稿量にして数千字程度に収め、それより長い章は導入・本論・まとめのように内部でさらに区切ります。

区切った分だけ、後で結合する作業が発生します。分ければ分けるほど精度は上がりますが、結合の手間も比例して増えるという関係を踏まえて、分割の細かさを決めてください。

分割する前に固定する3つの情報

分割して書かせる場合、各回の生成で同じ前提を渡さないと、章ごとに設定がずれます。生成に入る前に、次の3つを1つの文書(設定シート)にまとめておきます。

  1. 人物・組織の表記 … 誰を何と呼ぶか(役職名、敬称の有無、会社の一人称)
  2. すでに使ったエピソードと数字 … 各章で使用済みの具体例と、まだ使っていない候補
  3. 文体の見本 … 語尾、一人称、話しかけるトーンが分かる短い文章例

この設定シートを、分割したすべての回に共通の前提として渡します。共有し忘れた回だけ文体や呼称がずれる、というのがもっとも多い失敗です。

分割して書かせる手順

  1. 全体の章構成を決める(章タイトルと、各章で伝える結論を1文で書く)
  2. 設定シートを作る(表記・使用済みエピソード・文体見本)
  3. 章(または項)ごとに、その回の狙いと設定シートを合わせて渡し、生成する
  4. 生成のたびに、前の章で使った表現・エピソードと重複していないか確認する
  5. 全章がそろった段階で、通して読み、つなぎ目だけを整える

手順4を飛ばして5だけでまとめて直そうとすると、直す箇所が多くなりすぎて収拾がつかなくなります。 生成のたびに小さく確認するほうが、最終的な手戻りは少なくなります。

手順3では、設定シートに加えて「前章で何を書き終えたか」を一言添えます。たとえば「前章では創業の経緯までを書いた。この章は創業3年目の事業拡大から始める」のように、直前の到達点を短く伝えるだけで、章の冒頭が唐突になる失敗をかなり防げます。逆に、章タイトルだけを渡して生成すると、前章とのつながりを踏まえない書き出しになりやすくなります。

生成の順番は本の並び順でなくてもよい

分割して書く場合、必ずしも本に載る順番どおりに生成する必要はありません。先に書きやすい章(材料がそろっている章)から着手し、設定が固まってから難しい章に進むという順番のほうが、後戻りが少なくなることがあります。ただし、最終的な通し読みの確認は本の並び順で行ってください。順不同で生成すると、通し読みでしか見つからないつながりの矛盾が残りやすいためです。

分割でつまずきやすい失敗の型

失敗の型 原因 対処
章によって「当社」「弊社」が混在する 設定シートを共有せずに生成した 生成前に必ず表記ルールを渡す
同じエピソードが2つの章で重複して登場する 使用済みエピソードを記録していない 設定シートに使用済み一覧を追記しながら進める
章の後半だけ急に説明が薄くなる 1回の生成範囲が長すぎる 分割の単位をさらに細かくする
章末と次章冒頭のつながりが唐突 章ごとに独立して生成し、前後を意識していない 各章の冒頭で前章の要点を一言だけ引き継ぐ指示を入れる
章によって数字の丸め方が違う(「約100人」と「103名」など) 数値の表記ルールを設定シートに入れていない 数字の書き方(概数か実数か、単位の付け方)もシートに含める

これらは生成後の通し読みで見つかりますが、通し読みの段階で直そうとすると分量が多くなりがちです。分割の設計段階で防げる部分は、先に防いでおくほうが効率的です。

とくに、分割した原稿を担当者が交代しながら確認する場合は、設定シートの更新が止まりやすくなります。誰か1人が設定シートの最新版を管理する、という運用ルールを決めておくと、途中からの確認漏れを防げます。

プロンプトの作り方そのものは会社の本の原稿をAIに書かせるための具体的なプロンプトの作り方とはで扱っています。分割した原稿の文体をそろえる工程はAIで書いた会社の本の文体統一とトーン&マナーの整え方のコツとは、事実面のぶれの防ぎ方はAI原稿のハルシネーション対策|事実と異なる記述を防ぐ書かせ方の工夫をご覧ください。

当社が担う範囲と御社にお願いすること

当社のAI書籍出版代行では、章構成の設計と設定シートの作成、章ごとの生成、通し読みでのつなぎ目の確認までを当社の編集工程で行います。

御社にお願いするのは、各章の元になる材料(経緯・エピソード・数字)の提供と、生成した章の内容が事実と合っているかの確認です。分割の技術的な設計は当社が担いますが、内容が正しいかどうかの最終確認は御社にしかできません。

費用や工程の全体像は企業出版の費用は何にかかる?見積書の内訳と実費の目安にまとめています。

まとめ

  • 原稿が長くなるほど、AIは前半の設定を後半の生成に反映しにくくなります。
  • 章ごとに話題が独立する本は章単位、話の筋が続く本は項単位で分割してください。
  • 分割前に、表記・使用済みエピソード・文体見本を1つの設定シートにまとめておきます。
  • 生成のたびに小さく確認し、最後にまとめて直そうとしないことが手戻りを減らします。
  • 分割の設計・生成・つなぎ目の確認は当社の工程、事実の最終確認は御社にお願いしています。

原稿の分量や章立てに応じた分割方法は、実際の目次案を見ながらご相談いただけます。

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