書店に並ぶ本の値段が、どの店で買っても同じに見えることに気づいたことはあるでしょうか。一方で、電子書籍はストアによって値引きされていることがあります。この違いは偶然ではなく、制度の対象になる商品が決まっているためです。

会社の本を検討する際も、「定価」「本体価格」「実売」という言葉が何を指すのかを知っておくと、価格設定や見積もりの話がかみ合いやすくなります。 本記事では、これらの用語と、Amazon KDPでの価格設定がどう違うのかを整理します。

この記事で分かること:

  • 定価・本体価格・実売・刷り部数という言葉がそれぞれ指すもの
  • 書店の値段が一律に見える理由(再販売価格維持制度)と、電子書籍が対象外である理由
  • Amazon KDPでの価格設定が、従来の仕組みとどう違うか

定価と本体価格の違い

出版業界では、消費税を含まない金額を「本体価格」、本体価格に消費税を加えた金額を「定価」と呼ぶのが慣習です。「本体1,500円+税」という表示を見たことがあれば、それが本体価格です。

当社の費用表記も同じ考え方です。**80万円〜(税抜・表紙デザインを含む)**という表記は、消費税を別に加算する前提の金額であることを示しています。

用語 意味
本体価格 消費税を含まない金額
定価 本体価格に消費税を加えた金額(出版業界での慣習的な呼び方)
希望小売価格 Amazon KDPで著者が設定する、販売価格の基準となる金額

税の表示に関する細かいルールは変わることがあるため、正式な表示義務については、必要に応じて所管の窓口にご確認ください。用語の呼び方自体は業界内で長く使われてきたもので、見積もりや契約の話し合いでも共通言語として使われます。

なぜ書店の値段は一律に見えるのか

答えは、再販売価格維持制度です。独占禁止法は、メーカーが小売店の販売価格を拘束することを原則として禁じていますが、独占禁止法第23条第4項により、著作物については適用除外が定められています。

この適用除外の対象は、書籍・雑誌・新聞・レコード盤の4品目と、レコード盤と機能・効用が同一である音楽用テープ・音楽用CDの2品目、合わせて6品目に限られます。

対象になるもの 対象にならないもの
書籍・雑誌・新聞・レコード盤 電子書籍
レコード盤と同等の音楽用テープ・音楽用CD 上記6品目以外の商品全般

電子書籍は、この6品目に含まれません。 紙の本は出版社が決めた価格で全国どこでも同じ値段になりますが、電子書籍のストアは、紙の本と同じ制度の対象ではないため、値引きなど価格設定の自由度が異なる扱いになります。紙と電子で価格の見え方が違う理由は、この制度の対象範囲にあります。

なお、Amazon KDPで直接販売するペーパーバックが、書店流通を前提としたこの制度の運用上どう位置づけられるかについては、本記事のファクトバンクで確認できていません。 個別の販売形態への当てはめが必要な場合は、公正取引委員会や専門家にご確認ください。断定的な説明を見かけても、それだけで判断せず、一次情報にあたることをおすすめします。

実売と刷り部数

「実売」は、実際に読者の手に渡り、販売が成立した部数を指す言葉です。これに対して「刷り部数」は、印刷した総数を指します。

従来の書店流通では、書店に本を置く際に一定数をまとめて出荷し、売れ残った分は返品される仕組みが一般的です。そのため、刷り部数と実売部数は一致せず、実売のほうが少なくなるのが通常です。

Amazon KDPのペーパーバックは、注文が入るたびに1冊ずつ印刷される仕組みです。 先に大量に刷って書店に配るという工程自体がないため、従来のように「刷ったが売れ残った分」という状態が基本的に生じません。刷り部数と実売部数を分けて考える必要が薄いのが、この仕組みの特徴です。印刷コストとロイヤリティの計算は会社の本を紙でも出すで解説しています。

Amazon KDPでの価格設定の考え方

KDPでは、電子書籍・ペーパーバックとも、著者が希望小売価格を設定します。電子書籍のロイヤリティは35%と70%のどちらかを選べ、70%を選ぶにはKDPセレクトへの登録と、Amazon.co.jpでの価格帯(70%は250〜1,650円)などの条件があります。ペーパーバックのロイヤリティ率は、価格が999円以下なら50%、1,000円以上なら60%です。

いずれも、複数の書店が同じ本に別々の値段を付けるという状況は生じません。従来の「定価が決まっていて、どの書店でも同じ」という前提と、結果としては近い状態になりますが、成り立ちが異なる点は押さえておいてください。KDPの費用構造全体は企業出版の費用は何にかかる?でも扱っています。

価格を決めるタイミングと分かれ目

価格は、原稿の分量が固まる前に仮決めしておき、ページ数が確定した段階で最終確認するという順序が実務的です。ページ数が増えるほど印刷コストも上がるためです。たとえばモノクロ・200ページなら、印刷コストは206円+2円×200ページ=606円になります。この印刷コストを踏まえずに価格を低く設定すると、ロイヤリティ率をかけた金額が印刷コストを下回り、販売するたびに手取りが減ってしまう場合があります。

判断の分かれ目は、「多くの部数を安く広げたいか」「手渡しが中心で価格を抑える必要が薄いか」です。 展示会や名刺代わりに配る想定が中心なら、価格は販売による収益ではなく、Amazonの商品ページとして本が存在すること自体を目的に設定しても構いません。逆に、一般の読者への販売も見込むなら、印刷コストと手に取りやすさのバランスを考えて価格帯を決める必要があります。

当社の対応範囲

価格の最終決定は御社にお願いしています。当社は、KDPのロイヤリティ体系やページ数から見た印刷コストをもとに、目安となる価格帯をご提案します。**80万円〜(税抜・表紙デザインを含む)**という制作費用と、書籍そのものの販売価格は別のものとして分けて考えてください。

費用の詳細はこちら

まとめ

  • 本体価格は税抜の金額、定価は税込の金額を指す、出版業界での慣習的な呼び方です。
  • 再販売価格維持制度の適用除外は書籍・雑誌・新聞・レコード盤など6品目に限られ、電子書籍は含まれません。
  • 実売は実際に売れた部数、刷り部数は印刷した総数で、従来の流通ではこの2つが分かれます。
  • Amazon KDPのペーパーバックは注文ごとに印刷されるため、刷り部数と実売部数を分ける必要が薄くなります。
  • 価格の最終決定は御社が行い、当社は価格帯の目安をご提案する立場です。

用語の意味を踏まえたうえで、価格設定についてもご相談いただけます。

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