企業出版の型は、もともと法人の決裁者を想定して作られていることが多くあります。取引実績、代表者の経歴、事業への信頼性。これは稟議を通す相手、つまり法人の担当者や経営層に向けた内容です。

決裁者が消費者個人になるBtoC事業では、この型をそのまま使うと響きません。何を変えるべきかを、法人向けとの違いから具体的に整理します。

結論から言うと、変えるべきは「証拠として何を見せるか」と「専門用語をどこまで使うか」の2点です。法人の担当者は稟議に使える実績数値や比較データを求めますが、個人の消費者はそれよりも、自分と同じ立場の人がどう感じたかという体験の話に反応します。

この記事で分かること:

  • BtoBの本とBtoCの本で、読者が求める証拠の違い
  • 専門用語と実績の見せ方をどう変えるか
  • お客様の声を載せるときに確認しておく規制

BtoBの本とBtoCの本は「誰が読むか」が違う

法人向けの本は、稟議や検討のプロセスを経る読者を想定します。個人向けの本は、その場で読んで判断する読者を想定します。この違いが、内容の作り方全体に影響します。

BtoBの本 BtoCの本
読者 担当者・決裁権者(複数人が関与) 消費者本人
判断のプロセス 稟議・検討会議を経る その場、または短期間で判断
求める証拠 実績数値、比較データ、導入事例 体験談、安心材料、価格の分かりやすさ
専門用語 ある程度は許容される 極力減らす
CTAの向き 問い合わせ、見積もり依頼 購入、来店、会員登録

法人向けの本では、実績数値や比較表を厚めに扱っても読者は離れません。担当者は仕事として読むためです。個人向けの本で同じ密度にすると、専門的すぎて途中で読むのをやめられてしまいます。同じ会社が法人向けと個人向けの両方の事業を持っている場合でも、この本では読者をどちらか一方に絞ったほうが、内容の密度を調整しやすくなります。

専門用語と実績の見せ方を変える

専門用語は、業界の担当者には通じても、消費者には伝わりません。BtoCの本では、専門用語を使う場合は必ずその場で言い換えます。

実績の見せ方も変わります。法人向けでは「導入社数」「継続率」といった数字が効果的ですが、個人向けでは数字よりも「同じ悩みを持つ人がどう変わったか」という具体的な体験のほうが伝わります。数字を使う場合も、業界内の比較ではなく、消費者本人の生活にとっての意味に置き換えます。

たとえば「導入企業数300社」という表現は、法人向けでは信頼の裏付けになりますが、個人向けの本では意味が伝わりにくく、かえって遠い存在に感じさせることがあります。

価格や導入事例の書き方

法人向けの本では、見積もりの手順や稟議に使える資料の紹介が役立ちます。BtoCの本では、価格帯の目安を早い段階で示し、購入までの心理的なハードルを下げる書き方が向いています。

事例の見せ方も同様です。法人向けは「導入前の課題」「導入後の効果」という業務改善のストーリーが軸になります。BtoCでは、購入者本人の生活の変化や、購入を迷っていた理由がどう解消されたかというストーリーが軸になります。価格を後半までぼかす構成は法人向けでは通用しますが、個人向けでは途中離脱の原因になりやすいため、価格帯だけでも早い章で触れておくことをおすすめします。

お客様の声を載せるときの注意

BtoCの本では、お客様の声を載せる場面が多くなります。ここで確認しておきたいのが、ステルスマーケティング規制です。

2023年10月から、ステルスマーケティングは景品表示法違反となりました。規制の対象は商品・サービスを供給する事業者、つまり御社の側です。依頼を受けて投稿した第三者は、原則として規制の対象になりません。

注意が必要なのは依頼の仕方です。「星5つの評価を条件とする」のように投稿内容を具体的に指定した場合は、事業者の表示にあたるとされています。一方、投稿内容を指定せず、不特定多数へ一般的に感想を募集する場合は、事業者の表示にあたらないとされています。広告であることを示す場合は、「広告」「PR」といった用語や、提供を受けている旨を分かりやすく明示する必要があります。

お客様の声を集める段階で、依頼文にどこまで内容を指定しているかを見直すことをおすすめします。

規制業種は内容に制限がかかることがある

BtoC事業の中には、広告表現に業法上の制限がある業種があります。医療機関や美容クリニックはその代表例です。

業種の例 確認が必要な理由
医療機関・美容クリニック 医療法上の広告規制があり、書籍の内容が広告に当たる場合は対象になり得る
金融・保険関連の個人向けサービス 業法上の表示規制がある場合がある
健康食品・化粧品 効能効果の表現に法令上の制限がある場合がある

これらの業種に該当する場合、体験談の扱いや表現の可否は、業種ごとの法令やガイドラインで細かく定められていることがあります。本記事では具体的な可否を断定しません。 該当する場合は、所管の官庁が示すガイドラインや、業界団体、顧問弁護士に必ず確認してください。医療機関であれば、厚生労働省の医療広告ガイドラインと自治体の医療広告相談窓口が確認先になります。

活用場面もBtoBと変わる

法人向けの本は、商談や名刺交換の場面で活きます。BtoCの本は、購入を検討している個人の手に直接届く場面が向いています。店頭での配布、商品への同梱、実店舗での接客時の手渡しなどです。展示会やイベントでの配布と組み合わせる方法は展示会ノベルティに「AIで書く会社の本」で扱っています。

内容の企画段階からBtoCを想定して読者像を決めておくと、活用場面との整合性が取りやすくなります。テーマの立て方は会社の本のテーマの決め方を、営業活用全体の考え方は出版マーケティングとは?を参考にしてください。店頭配布を想定する場合は、レジ周りや商品棚のどこに置くかまで決めておくと、渡す担当者が迷いません。

当社が調整する範囲

当社は原稿の中で、専門用語の言い換えや、体験談の書き方が誇大にならないよう一般的な確認を行います。ただし薬機法や景品表示法、業法上の規制への最終的な適合判断は御社の責任です。規制業種に該当する場合は、公開前に業界団体や顧問弁護士への確認をお願いしています。

まとめ

  • BtoCの本では、実績数値よりも消費者本人の体験談のほうが伝わりやすくなります。
  • 専門用語は使う場面でその都度言い換え、法人向けと同じ密度にしません。
  • お客様の声を集める際は、依頼文が投稿内容を指定していないか、ステルスマーケティング規制の観点で見直します。
  • 医療・美容など規制業種は、可否を断定せず所管官庁や業界団体への確認を前提にします。
  • 活用場面も法人向けと異なり、店頭や購入検討中の個人に直接届く場面が向いています。

決裁者が個人か法人かによって、内容の作り方から見直す必要があります。読者像の整理から一緒に進められます。

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参考情報

※本記事は一般的な説明であり、個別の事案についての法的助言ではありません。