実績がまだ無い会社は、初回の商談で決まって同じ壁にぶつかります。「導入事例を教えてください」と聞かれても答えられない、価格が妥当かどうかを相手が判断する材料が無い、担当者が社内に説明しようにも「聞いたことがない会社」で止まってしまう。知名度や実績は、時間をかけて積み上げるしかないものですが、創業期に信用の代わりとして機能するものはあります。それが本です。 本記事では、実績の蓄積がまだ無い立ち上げ期特有の状況で、本がどう信用の代わりになるかを整理します。
この記事で分かること:
- 実績や知名度が無いことが商談で具体的に何を阻むか
- 事例やレビューが無い段階で、本がそれらの代わりになる理由
- 集客を急ぐあまり陥りやすい失敗と、その避け方
実績が無いと何に困るのか
「実績を教えてください」という質問に答えられないと、相手は導入の判断材料を失います。導入事例、顧客の声、業界内での評判。これらはすべて、他社が先に使ってくれた結果として生まれるものなので、創業期には原理的に揃いません。
担当者個人が良さを感じても、社内の決裁者に説明する段階で「実績のない会社にお願いする理由」を言葉にできず、話が止まることもよくあります。この壁は、営業トークを磨いても越えられません。 実績以外の判断材料を用意する必要があります。
本が信用の代わりになる仕組み
事例やレビューが実績に基づく証拠だとすれば、本は実績が無くても用意できる証拠です。会社の考え方が整理されていること、第三者である編集者の目を通っていること、一定の時間と費用をかけて形にしていること。これらは、実績とは別の角度から「きちんとした会社である」ことを示します。
| 信用を示す手段 | 創業期に使えるか | 理由 |
|---|---|---|
| 導入事例 | 使えない | 導入した顧客がまだいない |
| 顧客の声・レビュー | 使えない、または乏しい | 件数が少なく信頼性を示しにくい |
| 業界の認定・受賞歴 | 使えないことが多い | 実績年数や取引実績が条件になりやすい |
| メディア掲載 | 使えないことが多い | 取材対象になる実績がまだ無い |
| 本(専門性・考え方の提示) | 使える | 実績ではなく、考え方の整理度合いで示せる |
表からも分かるとおり、実績を前提にした信用の示し方は、創業期にはほぼ選べません。 本が使える理由は、実績の有無に左右されない手段だからです。
編集者が入る工程は、誤字や言い回しを直すだけの作業ではありません。話の飛躍や、根拠が薄いまま断定している箇所を洗い出し、主張と説明の順番を整える確認も含まれます。この確認を経て一冊にまとまっている、という事実そのものが、実績の代わりに「考えが整理された会社である」ことを示す材料になります。
「実績本」ではなく「専門性本」にする
ここでよくある失敗は、まだ無い実績を大きく見せようとすることです。抽象的な「業界を変えます」といった宣言だけの本は、実績の裏付けが無いまま期待だけを語ることになり、かえって信用を落とします。
創業期の本で語れるのは、実績ではなく、その分野をどう理解しているか、どんな課題意識で創業したか、どんな方法で解決しようとしているかです。この内容であれば、顧客がまだいなくても、事実に基づいて書けます。実績を装うのではなく、実績が無い段階でも堂々と語れる範囲に内容を絞ることが、創業期の本の設計で最も重要な判断です。
創業フェーズ別の使い方
創業からの時間によって、本に書ける内容と使い方は変わります。
| フェーズ | 本の中心 | 主な使い方 |
|---|---|---|
| 顧客ゼロ〜数件 | 課題意識、専門性、解決の方法論 | 商談時の判断材料、採用面談での説明資料 |
| 顧客が数件〜十数件 | 上記に加えて、匿名化した事例の一部 | 投資家向けの説明資料、既存の商談資料の補強 |
| 事業が安定してきた段階 | 実績を交えた展開 | 展示会配布、書店を通じた認知拡大 |
顧客ゼロの段階から実績を書こうとせず、まずは専門性と課題意識で信用を作り、実績が積み上がってから内容を更新していく、という段階的な進め方が現実的です。採用面接での使い方はAIで書く採用ブランディングの一冊|候補者に伝わる会社の本の作り方でも扱っています。
レビューを急いで集めようとする失敗
実績が無いことへの焦りから、身内や関係者に依頼して体裁の良いレビューを集めようとするケースがあります。ここには規制上の注意点があります。令和5年(2023年)10月からは、事業者の表示であることが分かりにくい形の宣伝は、景品表示法違反となるステルスマーケティング規制の対象です。 レビューの内容を指定して依頼した場合や、報酬を受け取った投稿者が自主的な意思による表示と認められない場合は、規制の対象になり得ます。広告であることを明示せずに評価を集める方法は避けてください。
実績が少ない段階でこそ、無理に体裁を整えるより、専門性を軸にした本のような、事実に基づいて用意できる材料で信用を積み上げるほうが、後々のリスクが小さくなります。
当社と御社の分担
当社が担うのは、御社の専門性や創業の経緯をヒアリングし、原稿として構成・執筆することです。ただし、創業期の本が機能するかどうかは、御社の側に語れる専門性や課題意識がどれだけ明確かに左右されます。 ヒアリングの時点で「何にこだわって創業したか」がまだ言葉になっていない場合、本の軸を決める前に、その整理から始める必要があります。この点は、当社からの質問に答えていく過程で一緒に整理していく形になります。
費用や含まれる範囲は、企業出版の費用は何にかかる?見積書の内訳と実費の目安にまとめています。経営者自身の視点を軸にした本についてはAIで経営者本を書く|社長の出版で会社の信頼を高める方法もご覧ください。
まとめ
- 実績が無いと、初回商談で判断材料が無いまま話が止まりやすい
- 事例やレビューが使えない創業期でも、本は考え方の整理度合いで信用を示せる
- まだ無い実績を大きく見せる「実績本」ではなく、専門性や課題意識を語る本にする
- 顧客ゼロの段階から実績を積み上げた段階まで、本に書く内容の重心はフェーズごとに変える
- レビューを体裁だけ整えて集める行為は景品表示法上のステルスマーケティング規制に触れ得るため避ける
実績が無いことは、本を作れない理由にはなりません。むしろ、実績が無い段階だからこそ、後から書き足せない今の課題意識を書ける、という側面もあります。
参考情報
- 消費者庁 令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。(2026-09-19確認)— 事業者の表示であることが分かりにくい表示は景品表示法違反の対象。投稿内容を指定した依頼や、自主的な意思と認められない報酬関係は事業者の表示に当たる。