展示会のブースで配る本と、採用ページで配る本を、同じ内容で作れないかという相談を受けることがあります。表紙だけ変えれば済むように見えますが、読む人の状況がまったく違うため、中身を変えずに使い回すと、どちらの読者にも刺さらない本になります。
展示会で本を受け取る人は、数十社が並ぶ会場を数分単位で回っている見込み客です。一方、採用向けの本を手に取る人は、入社を検討している求職者や、その家族です。読む時間も、知りたいことも別物です。
本記事では、この2つの読者像から、内容構成・配布方法・両方を作る場合の進め方を整理します。
この記事で分かること:
- 展示会向けと採用向けで、読者の関心と滞在時間がどう違うか
- それぞれに入れるべき章立てと、削ってよい章
- 両方作る場合に使い回せる部分と、作り直しが必要な部分
想定読者の違いが内容を決める
表で整理すると分かりやすくなります。
| 項目 | 展示会で配る本 | 採用で配る本 |
|---|---|---|
| 読者 | ブースに立ち寄った見込み客・取引先候補 | 求職者、内定者、その家族 |
| その場での滞在時間 | 数分(ブース対応中) | ―(持ち帰って自宅で読む) |
| 知りたいこと | 何をしている会社か、自社の課題を解決できるか | どんな人が働いているか、働くとどうなるか |
| 判断すること | 名刺交換・商談につなげるか | 応募する・内定を受けるか |
| 読み終える場所 | 移動中・帰社後 | 自宅、家族と一緒に |
**展示会の読者は「初対面」、採用の読者は「入社を具体的に検討している」**という違いがあります。前者は数十秒で興味を引く必要があり、後者はある程度の分量を読んでもらえる前提で書けます。
展示会で配る本に入れる内容
展示会向けは、初めて会社を知る人が対象です。専門用語を減らし、何をしている会社か、どんな課題を解決するかを早い段階で示します。
- 事業内容と強み(冒頭で簡潔に)
- 顧客の課題とその解決事例
- 導入後の変化(数字を使う場合は根拠を明確に)
- 問い合わせ先・次のアクション
社長の個人史や社内制度の詳細は、展示会向けでは優先度が下がります。関心があるのは「自社の役に立つか」であって、「その会社で働きたいか」ではないためです。展示会配布に特化した設計は展示会ノベルティに「AIで書く会社の本」で扱っています。
展示会向けの本は、最初の数ページで「誰の、どんな課題を解決する会社か」が伝わることが重要です。ブースで数分立ち止まってもらった相手が、持ち帰った後にパラパラとめくっただけでも概要をつかめる構成にします。目次と各章の冒頭に結論を置き、詳細な説明は後半に回す形が向いています。
採用で配る本に入れる内容
採用向けは、すでに会社に関心を持ち、入社を具体的に考えている人が対象です。読む時間もあるため、事業内容より人と文化に重心を置きます。
- 経営者の考え方、なぜこの事業をしているか
- 社員インタビュー(仕事内容・入社理由・成長した経験)
- キャリアパス、評価や育成の考え方
- 職場の雰囲気が伝わるエピソード
事業の実績や商品説明を厚くしすぎると、会社案内と変わらなくなり、「この会社で働く自分」を想像する材料が不足します。 採用向けの作り方はAIで書く採用ブランディングの一冊で詳しく解説しています。
社員インタビューは、広報が用意した想定回答をなぞるだけでは、読者に「作られた声」だと伝わってしまいます。良い面だけでなく、入社前後でのギャップや大変だったことも含めて聞き取ると、実感のこもった内容になります。取材の場に人事以外の第三者が同席し、社員が話しやすい雰囲気を作ることも有効です。
配布方法と接触時間の違い
展示会は、ブース対応の数十秒〜数分の会話がすべてです。本はその場で渡し切りで、後から読んでもらえるかは読者次第です。配布方法そのものの比較は展示会で配るか、ダイレクトメールで送るかで扱っています。
採用向けは、説明会・面接・内定後の送付など、複数の接点で繰り返し渡す機会があります。1回で判断されるものではなく、選考の過程を通じて何度も読み返される前提で作れます。
展示会での立ち話は、名刺交換をした瞬間がピークです。会話の中で「後で読んでください」と一言添えるだけでも、持ち帰った後に開いてもらえる確率は変わります。採用向けは、面接前に本を渡しておくと、面接で「本のどこに関心を持ったか」を聞く材料としても使えます。
両方作る場合の進め方とコスト
同じ会社の本を、展示会用と採用用の両方で作りたい場合、使い回せる部分と作り直す部分があります。
| 要素 | 使い回せるか |
|---|---|
| 会社の沿革・基本情報 | 使い回せる |
| 事業内容の説明 | 一部使い回せる(採用向けは背景説明を厚くする) |
| 経営者インタビュー | 目的に応じて質問を変える必要がある |
| 事例・エピソード | 展示会用は顧客事例、採用用は社員エピソード。別に用意する |
| 構成・章立て | 目的ごとに組み直す |
沿革や基本情報は共通の土台として使えますが、読者に見せる「顔」の部分は別に作る必要があります。 当社では、企画設計の段階でどちらを主目的にするかを最初に決め、共通部分と専用部分を分けて進めます。2冊分を一から作るよりは効率化できますが、それぞれに専用の取材・執筆が必要な範囲は残ります。企画の立て方全般は会社の本のテーマの決め方をご覧ください。
同時に2冊を依頼する場合と、時期をずらして依頼する場合とでは、進め方が変わります。同時であれば、企画設計のヒアリングを1回にまとめ、そこから展示会向け・採用向けそれぞれの構成に分岐させられます。時期をずらす場合は、先に作った本の内容を踏まえて、後発の本の企画からあらためて着手する形になります。どちらが良いかは、両方の公開時期がどれだけ近いかによって変わります。
よくある失敗
- 1冊で両方を狙って、結局どちらの読者にも刺さらない。 「誰のために」が曖昧なまま書き始めると起こります。
- 展示会用の実績アピールを採用向けにそのまま流用し、求職者が知りたい「働き方」の情報が足りなくなる。
- 採用向けの社員インタビューを、展示会で初対面の見込み客に渡し、何をしている会社か伝わらない。
- 社員インタビューを人事担当がその場で修正しすぎて、話し言葉の実感が失われる。 事実確認と、話し方まで変える添削は別物です。
最初に「主な読者は誰か」を1人に決めてから章立てを組むと、この失敗は防げます。
まとめ
- 展示会の読者は初対面の見込み客、採用の読者は入社を具体的に検討している人です。目的が違うため内容も変わります。
- 展示会向けは事業内容と課題解決を早く示し、採用向けは経営者の考えと社員の声を厚くします。
- 展示会は数分の接点、採用は選考を通じた複数回の接点という違いがあります。
- 両方作る場合、沿革や基本情報は共通化できますが、事例と構成は目的ごとに作り直しが必要です。
- 「誰のために書くか」を最初に1人に決めることが、内容のぶれを防ぐ一番の近道です。
展示会用・採用用のどちらを先に作るべきか、両方同時に進めるべきかは、目的と時期次第です。目的の整理からご相談いただけます。