「原稿に書いた数字、このまま載せて大丈夫だろうか」。AIで下書きを作ったあとに、この不安を持つ担当者は多いです。結論から言うと、ファクトチェックは「誰かが全部やってくれる」ものではありません。 当社が担当する範囲と、御社にしか確認できない範囲があります。

この線引きが曖昧なまま進めると、確認したつもりの記述が誰も見ていなかった、という抜けが起きます。本記事では、校正とファクトチェックの違いを整理したうえで、作業の範囲をどこで分けるべきかを具体的に書きます。

この記事で分かること:

  • 校正とファクトチェックが別の作業である理由
  • 当社が担当する範囲と、御社にお願いする範囲の線引き
  • 確認作業がつまずきやすい場面と、その対処

校正とファクトチェックは別の作業です

同じ「原稿の確認」でも、見ているものが違います。

校正 ファクトチェック
見るもの 表記・誤字脱字・文法・言い回し 書かれている事実が正しいかどうか
判断の基準 日本語として自然か、表記が統一されているか 資料や記録と一致しているか
誰が判断できるか 日本語を扱う編集者であれば可能 その事実を知っている人でないと判断できない
見落とすと起きること 読みにくい、誤植が残る 誤った情報がそのまま世に出る

校正は文章の技術的な確認なので、当社の編集者が担当できます。一方でファクトチェックは、その事実を知っている人にしか正誤を判断できません。 ここが、責任分担を考えるときの出発点です。

AIが作った原稿で増えるチェック項目

AIによる下書きは、文章としては自然に読めるぶん、誤りに気づきにくいという性質があります。実在しない出来事をもっともらしく書いたり、似た名前の別の出来事を混同したりすることがあります。

そのため当社の制作フローでは、AI下書きの段階から、次のような項目を通常より重点的に確認します。

  • 固有名詞(社名・部署名・役職名・人名)の表記
  • 年号・日付・在籍年数などの時間に関する記述
  • 金額・数量・件数などの数字
  • 「〜と言われている」「〜と評判の」のような、出典のあいまいな言い回し

出典のあいまいな言い回しは、AIが確信のない内容を自然な日本語で埋めてしまう典型的なパターンです。見つけた場合は、根拠が確認できるまで具体的な表現に直さず、あえて一般的な言い方にとどめます。

実際によくある確認漏れの型

編集の現場で見つかりやすいのは、次のような型です。

  • 年号のずれ:「創業から〇年」という表現を、原稿を書いた時点の年で計算してしまい、発行時点とずれる
  • 役職の混同:同じ部署に似た役職が複数あり、AIがどちらの発言か取り違える
  • 要約による意味の変化:ヒアリングでの発言をAIが要約する過程で、条件や前提が抜け落ち、発言の意図が変わる
  • 推測値の断定化:「おそらく〇件」という担当者の見立てが、原稿では「〇件」と確定した数字のように書かれる

いずれも、文章としては自然に読めてしまうため、通して読むだけでは気づきにくい種類の誤りです。 資料や関係者への確認と突き合わせる作業を省略できない理由は、ここにあります。

当社が担当する範囲

当社の編集者がファクトチェックの工程で行うのは、次の作業です。

  • 原稿内での矛盾がないかの確認(前の章で「創業10年」と書き、後の章で年数が食い違っていないかなど)
  • 御社からいただいた資料(議事録・過去の広報物・ヒアリング内容)との突き合わせ
  • 出典のあいまいな断定表現の洗い出しと、御社への確認依頼
  • 確認結果を反映した原稿の修正

当社が持っているのは、御社からいただいた資料と、ヒアリングで伺った内容だけです。それ以外の事実を、当社が独自に「正しい」と判断することはできません。

御社にお願いする範囲

次の確認は、御社でなければ行えません。

  • 社内の数字(売上・従業員数・拠点数など)の最終確認
  • 創業や出来事の年号、担当者の在籍期間
  • 役職名・肩書の現在の正確さ(原稿執筆から発行までの間に異動があることもあります)
  • 社外の方(取引先・元社員・登場人物)の発言内容と、その方への掲載可否の確認

とくに社外の方の発言は、当社が本人に連絡を取る立場にないため、掲載可否の確認は御社にお願いしています。 これは信頼関係の有無だけの問題ではなく、当社が発言者ご本人と直接の面識を持たない以上、確認の依頼自体が唐突に見えてしまうためでもあります。 元社員の証言を扱う場合の同意の考え方は、退職した社員の証言、掲載を続けてよいか、削除を求められたらどうするかで別に整理しています。

責任分担表

工程ごとの分担をまとめると、次のようになります。

確認項目 当社 御社
表記・文法・言い回し 担当する
原稿内の矛盾 担当する 気づいた点があれば連絡
資料との突き合わせ 担当する(いただいた資料の範囲) 資料の提供、不足分の追記
社内の数字・年号・肩書 突き合わせのみ 最終確認・訂正
社外の方の発言確認 本人への確認・掲載可否の判断

この表の右側が空欄になっている項目は、当社では正誤を判断できない項目です。空欄をそのままにして進めることが、誤った事実の掲載につながります。

判断が割れた場合の扱い

編集者が原稿内の矛盾に気づいても、どちらが正しいかまでは分からないことがあります。その場合は、当社から御社へ「どちらが正しいか」を確認する形で連絡し、御社の回答をもって原稿を確定させます。 当社が独自に片方を選んで進めることはしません。

回答が得られない状態で入稿の期限が迫った場合は、断定を避けた表現(具体的な数字を挙げず「複数の」「一定の」といった言い方にとどめるなど)に直したうえで進めるかどうかを、御社と相談して決めます。

確認の進め方とつまずきやすい点

一般的な流れは次のとおりです。

  1. AIによる下書き作成
  2. 当社編集者による校正・原稿内チェック
  3. 当社編集者による資料との突き合わせ、確認依頼リストの作成
  4. 御社での事実確認・訂正
  5. 反映後の最終確認

つまずきやすいのは3から4に移る段階です。確認依頼リストを一度に多く渡すと、御社側の確認が後回しになりがちです。確認項目は章ごとに小分けにして渡すほうが、対応が進みやすくなります。

もうひとつのつまずきは、「たぶんこうだったはず」という記憶頼みの回答です。記憶による確認は、資料による確認より誤りが残りやすいため、可能な限り議事録や記録と照らし合わせることをおすすめします。社内資料の集め方は社内資料・過去資料の集め方と整理法|AI執筆の元ネタをどう揃えるかで扱っています。

確認にかかる時間を見込んでおく

ファクトチェックの工程は、原稿の分量よりも確認すべき固有名詞・数字の密度によって時間が変わります。社史や実績紹介のように数字や年号が多い章は、一般的な内容の章より確認に時間がかかると見込んでおいてください。

御社側の確認担当者が1人しかいない場合、確認依頼が特定の週に集中すると、その週の対応が滞りがちです。着手前の打ち合わせで、誰が・どのタイミングで確認するかをあらかじめ決めておくと、後工程での停滞を避けやすくなります。

まとめ

  • 校正は文章の技術的な確認、ファクトチェックは事実の正しさの確認で、別の作業です。
  • 当社は原稿内の矛盾といただいた資料との突き合わせを担当します。
  • 社内の数字・年号・肩書・社外の方の発言確認は、御社にお願いしています。
  • 責任分担表で空欄になっている項目を放置しないことが、誤った事実の掲載を防ぎます。
  • 確認依頼は章ごとに小分けにすると、対応が進みやすくなります。

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