印刷会社やAmazon KDPから届く見積書や色校正には、聞き慣れない専門用語が並びます。「PP加工」「特色」「トンボ」もその代表です。意味が分からないまま進めると、思っていた仕上がりと違う本ができあがることがあります。
この3つの用語は、印刷の異なる工程で使われています。特色は色を決める段階、トンボは版を組む段階、PP加工は印刷が終わったあとの加工段階です。本記事では、それぞれがどの工程で、何のために使われるかを整理します。
この記事で分かること:
- PP加工・特色・トンボが、それぞれ印刷のどの工程で使われる用語か
- 特色を使うとKDPの入稿でどう扱われるか
- 見積書や色校正でこれらの用語を見たときに確認すべき点
3つの用語がどの工程に出てくるか
書籍が印刷・製本されるまでの流れの中で、3つの用語が登場する場所は異なります。
| 用語 | 登場する工程 | 何を指すか |
|---|---|---|
| 特色 | デザイン・色校正 | 印刷インクの色の指定方法の一つ |
| トンボ | データ作成・面付け | 断裁・折りの位置を示す目印 |
| PP加工 | 印刷後の表面加工 | 表紙にフィルムを貼る仕上げ加工 |
同じ「印刷」でも段階が違うため、それぞれ確認すべきタイミングも異なります。 特色は表紙デザインを固める段階、トンボは入稿データを作る段階、PP加工は仕様を決める見積もりの段階で話題になります。
特色(とくしょく)とは
特色とは、印刷で使うインクの色を指定する方法の一つです。通常のカラー印刷は、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色(CMYK)を掛け合わせて色を再現しますが、特色はあらかじめ調合された単色のインクをそのまま使う方式です。企業ロゴの色を正確に再現したい場合などに使われます。
ただし、Amazon KDPのペーパーバック表紙データでは特色は使えません。 KDPの表紙データはCMYKでの入稿が求められており、公式ヘルプでは「特色は使わずCMYKへ変換する」ことが明記されています。会社のロゴに指定色(特色)がある場合、KDPで出版する表紙はCMYKに変換した色で作られるため、印刷物での見え方が特色指定時とわずかに変わることがあります。厳密な色再現が必要なロゴをお持ちの場合は、この前提でご相談ください。
名刺や封筒を特色で発注している会社が、同じ感覚で本の表紙を作ると、名刺の色とわずかに違う色みで刷り上がることがあります。これは印刷のミスではなく、CMYKへの変換によって起きる想定内の差です。「表紙の色が名刺と完全に一致しないことがある」という前提を、デザインを固める前に社内で共有しておくと、入稿後の色みの違いで慌てずに済みます。
表紙データの作り方全般は会社の本の表紙デザインにまとめています。
トンボ(見当マーク)とは
トンボは、印刷物の四隅などに入る、断裁や色の位置合わせのための目印です。仕上がりのサイズより外側に印刷され、断裁の際に切り落とされる前提で配置されます。「トンボが写っている」入稿データを見ると誤植に見えますが、これは正しい状態です。
トンボが役立つのは主に次の場面です。
- 断裁位置の確認:どこで紙を切るかを示す
- 色版のズレ確認:複数の版を重ねたときに位置がずれていないかを確認する
自分でデータを作る場合、トンボの位置と仕上がり線の関係を誤ると、断裁後に不要な余白が残ったり、逆に必要な絵柄が切れたりします。 Amazon KDPのように印刷会社側でテンプレートや仕様が定められているサービスでは、決められた裁ち落とし幅(KDPのペーパーバック表紙は仕上がり線の外側に3.2mm)に沿ってデータを作ることが前提になり、著者が自分でトンボを描き込む必要はありません。従来型の印刷会社に発注する場合は、トンボの入れ方や位置がデータ入稿ガイドラインで指定されていることが多いため、発注先の仕様を確認してください。
PP加工とは
PP加工は、印刷後の表紙にポリプロピレンフィルムを貼る表面加工です。表紙の見た目に光沢を出す「グロスPP」と、つや消しにする「マットPP」が代表的です。汚れや傷から表紙を守る効果もあるため、手に取られる機会が多い本でよく使われます。
PP加工を含め、印刷後の表面加工にはさまざまな種類があり、対応できる加工の種類・仕上がり・費用は印刷会社によって幅があります。「PP加工にするといくら上がるか」は事業者ごとに条件が異なるため、本記事では金額を挙げません。見積もりの段階で、対応可否と費用を確認してください。
見積書・色校正で確認すべきこと
見積書や色校正でこれらの用語が出てきたら、次の点を確認すると認識違いを防げます。
| 場面 | 確認すること |
|---|---|
| 見積書に「特色」とある | 会社のロゴや指定色をそのまま再現できるか、CMYKへの変換が前提か |
| 見積書に「PP加工」とある | 標準仕様か追加オプションか、グロスかマットか |
| 色校正にトンボが写っている | 仕上がり線の内側に必要な情報が収まっているか |
色校正はトンボの外側ではなく、仕上がり線の内側だけを見て判断してください。 トンボそのものは印刷物には残りません。
KDPと印刷会社、どちらで用語を意識する必要があるか
これらの用語をどこまで自分で意識する必要があるかは、発注先によって変わります。
| 発注先 | 特色・トンボ・PP加工との関わり方 |
|---|---|
| Amazon KDP | 決められたテンプレート・要件に沿ってデータを作れば、トンボの配置や色の変換は仕組みの側で吸収される |
| 従来型の印刷会社 | 見積書・入稿仕様書に用語がそのまま出てくるため、都度確認が必要 |
KDPで出版する場合、著者がトンボを自分で描いたり、特色を手作業でCMYKに変換したりする必要はありません。 決められた仕様(裁ち落とし・解像度・カラーモード)を満たしたデータを作れば済みます。一方、手渡し用にまとめて印刷会社へ発注する場合は、判型や用紙によって対応できる加工が変わるため、これらの用語が見積もりに直接出てきます。判型の選び方は四六判とA5判、どちらで作るか、KDPと印刷会社を使い分ける考え方は会社の本を紙でも出すにまとめています。
当社が引き受ける範囲
当社のAI書籍出版代行では、Amazon KDPの入稿仕様(CMYKでの色指定、裁ち落としの確保など)に沿った表紙・図表データの作成を対応範囲としています。80万円〜(税抜・表紙デザインを含む) に、表紙・図表デザインとKDPへの入稿代行が含まれます。
少部数印刷・製本も対応範囲に含まれますが、PP加工のような特殊な表面加工を標準仕様に加えるかどうかは、本の用途と部数によって変わるため、見積もりの段階でご希望をお伺いしています。仕上がりの質感にこだわりがある場合は、企画の早い段階でお伝えください。
まとめ
- 特色・トンボ・PP加工は、それぞれデザイン、データ作成、印刷後の加工という異なる工程で使われる用語です。
- 特色はインクを単色で指定する方法ですが、KDPのペーパーバック表紙データはCMYKでの入稿が求められ、特色は使えません。
- トンボは断裁や色版の位置合わせのための目印で、印刷物には残りません。
- PP加工は表紙にフィルムを貼る表面加工で、光沢のグロスとつや消しのマットがあります。
- 対応可否や費用は事業者や用途によって幅があるため、見積もりの段階で必ず確認してください。
見積書や色校正の用語で迷ったときは、そのままご質問ください。
参考情報
- Amazon KDP ペーパーバックの表紙の作成(2026-09-19確認)— ペーパーバックの表紙データはPDF1ファイルで、カラーはCMYK(特色は使わずCMYKへ変換)、裁ち落としは仕上がり線の外側に3.2mm。
※仕上がり加工の種類・費用は印刷会社ごとに異なります。実際のご発注にあたっては、各社の見積もりで対応可否をご確認ください。