出版してしばらく経つと、本に書いた内容を研修資料に使いたい、自社メディアの記事に転載したい、取引先向けの資料に抜粋したいといった声が出てきます。ここで迷うのが、その二次利用がどこまで自由にできるかです。
結論から言うと、版権(著作権)が誰に帰属しているかと、その範囲内でどこまで社外に許諾できるかは別の話です。自社に権利があっても、原稿に含まれるすべての要素を無制限に使えるわけではなく、無制限に他社へ使わせられるわけでもありません。本記事では、本の内容を別媒体で二次利用する権利が誰に帰属し、社外にどこまで許諾できるかだけを扱います。
この記事で分かること:
- 版権が御社に帰属している場合に、どこまで自由に使えるか
- 二次利用の類型ごとに確認すべき点
- 社外へ許諾するときに契約で決めておく事項
版権の帰属と「使える範囲」は別の問題
まず前提として、当社のAI書籍出版代行で制作した原稿の版権は、著者である御社に帰属します。この帰属の基本的な考え方はAIを活用した企業出版とは?でも触れています。
ただし版権が御社にあることと、原稿に含まれるすべての要素を自由に二次利用できることは、必ずしも同じではありません。原稿の中に第三者の権利が関わる部分(他社データの引用、インタビュー相手の発言、外部提供の写真など)が含まれる場合、その部分だけは別の確認が必要になります。
たとえば、本の中の1章をまるごと社内研修用のスライドに転記したいとします。文章そのものの著作権は御社にあるため、社内で使う分には問題になりにくい利用です。ところが、その章に他社の統計データや、外部の写真家が撮影した写真が使われていた場合は話が変わります。文章の版権とは別に、そのデータや写真の使用許諾がどこまでの用途を想定していたかを、あらためて確認する必要があります。「本に載っているから何にでも使える」とは限らないという点が、二次利用を考えるときの出発点です。
二次利用の類型ごとの確認点
二次利用と一口に言っても、形によって確認すべき点が変わります。
| 二次利用の形 | 主に確認すること |
|---|---|
| 社内研修資料への転用 | 社内利用に留まるため比較的自由。ただし写真・引用部分は要確認 |
| 自社サイト・オウンドメディアへの転載 | 版権が御社にあれば基本的に可能。抜粋・要約にする場合は改変の範囲を意識 |
| 外部メディアへの寄稿・転載許諾 | 御社が「許諾する側」になる。範囲・期間・対価を契約書で定める |
| セミナー資料・動画化 | 原稿のまとめ直しにあたるため、翻案を前提にした許諾かどうかを確認 |
| グループ会社・取引先への提供 | 提供先が第三者にあたるため、範囲を決めて許諾する必要がある |
このうち特に注意が必要なのは、インタビューで話してもらった社員や取引先の発言です。書籍への掲載を前提に同意を得ている場合、動画化やセミナー資料への転用まで同意の範囲に含まれているとは限りません。二次利用の形が変わるときは、同意の範囲も見直してください。
社外メディアへの寄稿・転載許諾は、他の類型と性質が異なります。ここまでの類型は「御社が自分の本をどう使うか」という話ですが、外部メディアへの許諾は「御社が他社に使わせる」立場になります。許諾する相手が原稿をどう改変するか、どのメディアに載せるかまで含めて条件を詰める必要があるため、次の章で扱う契約上の項目がそのまま関わってきます。相手がどのような読者に向けて発信するメディアかによって、御社の本の見え方も変わる点に注意してください。
社外へ許諾するときに決めておくこと
社外の会社や個人に、本の内容の一部を使ってよいと許諾する場合、口頭の了承だけで進めるとあとで行き違いが起きます。次の点を許諾の書面(契約書または覚書)に明記してください。
| 決めておく項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 使ってよい範囲 | 書籍のどの章・どの部分か。全体か抜粋か |
| 独占か非独占か | 同じ内容を他社にも許諾してよいか |
| 期間 | いつまで使ってよいか。更新の有無 |
| 改変の可否 | そのまま使うか、要約・翻訳・編集を認めるか |
| 対価 | 無償か、使用料が発生するか |
| クレジット表記 | 出典・著者名の表示をどうするか |
「とりあえず使っていいですよ」で進めてしまうと、範囲や期間が曖昧なまま、想定外の使われ方をされたときに止められなくなります。許諾する前に、この6項目を埋められるかを確認してください。
特に独占か非独占かは、あとから変更しにくい項目です。最初に独占の条件で許諾してしまうと、御社自身が別の相手に同じ内容を使わせたいと考えたときに、その相手との契約が足かせになります。許諾先が「独占にしてほしい」と求めてきた場合は、期間を区切る、対象を書籍全体ではなく特定の章に絞るなど、範囲を狭めることで折り合いをつける方法もあります。
許諾するかどうかを判断する手順
社外から二次利用の相談を受けたときは、次の順番で確認すると判断しやすくなります。
- 原稿のどの部分を使いたいのかを相手に具体的に聞く。「本の内容を紹介したい」だけでは範囲が分かりません。
- その部分に第三者の権利が関わっていないかを確認する。他社データの引用やインタビュー発言が含まれる場合は、先にその権利者の意向を確認します。
- 社内で誰が許諾の可否を判断するかを決めておく。広報担当が個別に返事をしてしまうと、あとで社内の他部門の意向と食い違うことがあります。
- 許諾する場合は、前章の6項目を書面に落とし込んでから返答する。
口頭で先に「良いですよ」と答えてしまうと、あとから条件を付け直すのが難しくなります。返答は書面の準備が整ってからにしてください。急ぎの依頼であっても、「前向きに検討します。条件を書面にまとめてから正式にお返事します」と伝えれば、相手を待たせすぎずに済みます。
よくある行き違いの型
- 書籍への掲載にしか同意していない社員の発言が、動画やセミナー資料に転用されていた。
- 「社内資料として使ってよい」と伝えたつもりが、取引先への配布資料にまで使われていた。
- 独占的に使わせたつもりが、契約書に「独占」の文言がなく、他社にも同じ内容を許諾されてしまった。
いずれも、許諾の範囲を口頭や短いメールだけで済ませたことが原因です。金額が発生しない社内的な利用であっても、範囲を書面で残しておくと、後から確認するときの手間が減ります。担当者が異動・退職した後でも、書面が残っていれば経緯を追いかけられます。
当社の場合
当社のAI書籍出版代行で制作した本の版権は、著者である御社に帰属します。二次利用や社外への許諾をどこまで進めてよいかの判断は御社が行っていただく事項で、当社が許諾先を選定したり契約交渉を代行したりすることは含まれません。契約書の該当条項は発注前にご確認いただけます。判断に迷う個別の事案については、弁護士等の専門家へあらかじめ相談することをおすすめします。
原稿を書く前の権利関係の整理については会社の本のテーマの決め方も参考にしてください。制作会社との契約書全般の読み方は出版代行の制作会社との契約書の読み方にまとめています。
まとめ
- 版権が御社に帰属していても、原稿内の第三者要素(引用・写真・発言)は別途確認が必要です。
- 二次利用の形(研修資料・自社サイト・外部寄稿・セミナー動画・グループ会社提供)ごとに確認点が異なります。
- インタビュー相手の同意は書籍掲載を前提にしたものであり、動画化等への転用まで含むとは限りません。
- 社外への許諾は、範囲・独占の有無・期間・改変の可否・対価・クレジットを書面で定めます。
- 口頭やメールだけの許諾は、想定外の使われ方をされたときに止められなくなる原因になります。
二次利用の範囲や許諾の書面をどう整えるか、契約の内容から一緒に確認しましょう。
※本記事は一般的な説明であり、個別の事案についての法的助言ではありません。