出版したい時期は決まっているのに、いつまでに何を終えればよいかが分からない。このずれは、逆算の起点を「公開日」の1点にしてしまうことから生まれます。 実際には、公開日より前に完了させるべき中間の締め切りが複数あり、それぞれに前後関係があります。

本記事では、目標の公開日から各工程の締め切りを配置する、逆算スケジュール表の組み方だけを扱います。企画の立て方そのものは会社の本のテーマの決め方で扱っています。

この記事で分かること:

  • 逆算の起点をどこに置くべきか
  • 工程どうしの依存関係と、スケジュール表への落とし込み方
  • 承認往復で遅れが生じる典型パターンとその防ぎ方

逆算の起点をどこに置くか

「出版日」を起点に逆算すると、実際に必要な日付とずれることがあります。目的別に、本当の起点は次のように変わります。

目的 逆算の起点にすべき日 理由
展示会・イベントで配る 会場に本が到着している日 印刷・発送・社内の荷受けに日数がかかる
周年式典で配布する 式典の前日まで 当日の朝に届いても確認する余裕がない
採用シーズンに合わせる 説明会・面接の初回開催日 一度出した募集要項と食い違いを作らない
検索での露出を優先する 特になし(早いほど良い) 公開が早いほど蓄積の期間が長くなる

「出版日」と「読者の手元に届く日」は別物です。 手渡しが目的の場合は、出版日ではなく手元に届く日から逆算してください。

工程を洗い出し、依存関係を見る

工程は独立していません。前の工程が終わらないと次に進めないものがあります。

工程 前工程との関係 担当
企画・構成の確定 起点 御社と当社で協議
原稿執筆 企画確定後に開始 当社(最短1週間が目安)
編集・事実確認 原稿完成後 当社、事実確認は御社にも確認依頼
御社の内容確認・承認 編集後の原稿に対して 御社
本文の組版 確定原稿に対して → ここでページ数が確定する 当社
表紙デザイン 組版でページ数確定後(紙も出す場合) 当社
入稿・校正刷りの確認 表紙データ完成後 当社・御社
出版 校正刷り承認後 当社

表の中で特に見落とされやすいのが、本文の組版とページ数の関係です。 紙の本の表紙は、背表紙の幅をページ数から計算して作るため、原稿の分量が最終確定するまで表紙データを完成させられません。表紙を先に作り込むと、原稿の増減が出たときに作り直しになります。詳しい仕組みは会社の本を紙でも出す、表紙デザインの決め方は会社の本の表紙デザインで扱っています。

逆算スケジュール表の型

実際の表は、公開希望日を起点に、工程ごとの締め切りを週単位で並べます。

週(公開日基準) 工程 この時点で終えていること 確認者
公開日 出版 すべて完了
公開日の1〜2週間前 校正刷りの確認・入稿 表紙データ完成、内容の最終承認 御社(最終承認)
公開日の3〜4週間前 表紙デザイン 本文のページ数確定 当社
公開日の4〜5週間前 本文の組版 原稿の確定 当社
公開日の5〜7週間前 御社の内容確認・承認 編集後の原稿が届いている 御社
公開日の6〜8週間前 原稿執筆・編集 企画・構成が確定している 当社
公開日の8週間以上前 企画・構成の確定 目的と読者像の合意 御社と当社

この表の週数は目安であり、御社側の確認にかかる日数によって伸び縮みします。 当社が担当する原稿執筆は最短1週間が目安ですが、内容・分量・ご確認の状況により変わります。紙を含む場合は組版と校正刷りの確認が加わるため、電子書籍のみより全体の期間は長くなります。

電子書籍だけで公開する場合は、表の中の「表紙デザイン」以降の工程を、背表紙の計算を待たずに進められます。紙を出すかどうかが決まっていないと、逆算表そのものが組めません。 検討中の段階であっても、逆算表を作る時点までには紙の有無だけは決めておいてください。

「まだ迷っているので両方に対応できる日程にしてほしい」という要望も出ますが、紙の有無で分岐する工程が多いため、両対応の日程は結局どちらか厳しいほうの条件に引きずられます。迷っている場合ほど、早い段階で仮決めをして逆算を始めるほうが、結果的に着手が早くなります。

承認・確認の往復で遅れが起きるパターン

逆算表がずれる最大の原因は、印刷や執筆そのものではなく、社内の確認・承認の往復です。

  • 確認者が複数いるのに、締め切りを1つにまとめてしまい、誰か1人の確認が遅れると全体が止まる
  • 事実確認のために社内の別部署への照会が必要だと分かるのが、締め切り直前になってから
  • 「確認」の意味が、誤字脱字の確認なのか、内容の可否判断なのかが確認者ごとに揃っていない
  • 役員決裁が必要な内容が含まれていることに、原稿完成後に気づく

対処は、確認者を1人ずつ表の行に分けることです。 「御社確認」とひとまとめにせず、誰が・何を・いつまでに見るかを分けておくと、どこで止まっているかが見えるようになります。役員決裁が必要な内容(数字の開示や他社への言及など)は、企画段階で洗い出しておくと後戻りを防げます。

さらに、確認を依頼する側の伝え方にも遅れの原因があります。「ご確認をお願いします」とだけ伝えると、確認者は何をどう見ればよいか分からず、後回しにされがちです。「誤字脱字ではなく、数字と固有名詞の正確さだけを見てほしい」というように、確認してほしい範囲を絞って依頼すると、返信までの日数が短くなる傾向があります。 確認範囲を絞ることは、催促の手間を減らすことにもつながります。

逆算がずれたときの立て直し方

締め切りが1つ遅れても、そこで公開日を諦める必要はありません。まず確認することは次の2つです。

  1. 遅れているのはどの工程か。 前工程の完了待ちなのか、確認する人が足りていないのかを分けて考えます。
  2. 後ろの工程を圧縮できるか、公開日をずらすべきか。 組版や印刷は品質に直結するため、ここを削るより公開日をずらすほうが安全な場合が多くなります。

紙を作る予定がある場合は、表紙データの作り直しが起きないよう、原稿の分量が固まってから組版に進む順序を崩さないでください。順序を守れば、遅れが出ても被害を1つの工程に留めやすくなります。

ケース:展示会の10週間前から動き始めた場合

具体的なイメージを持てるよう、展示会に合わせて紙の本を用意する例で見てみます。展示会当日から数えて10週間前に着手した場合、逆算表は次のように埋まります。

展示会からの週数 この週にやること 完了させておくもの
10週間前 企画・構成の確定 目的と読者像の合意
8〜9週間前 原稿執筆 企画確定済みの構成案
6〜7週間前 編集・事実確認、御社の内容確認 完成原稿
4〜5週間前 本文の組版、表紙デザイン 確定原稿、ページ数
2〜3週間前 入稿・校正刷りの確認 表紙データ、内容の最終承認
1週間前 著者用コピーの発注・到着確認 出版済み、印刷実費の発注
展示会当日 会場搬入 手元に本がある状態

この例で見落とされやすいのは、末尾の「著者用コピーの発注・到着確認」です。 出版そのものが完了しても、配布用の部数が手元に届くまでには別に日数がかかります。出版日と会場搬入日を同じ週に置いてしまうと、印刷物の到着が間に合わないおそれがあります。

10週間という期間そのものが基準になるわけではありません。御社の確認・承認にかかる日数が読めるようになるまでは、各週にもう少し余裕を持たせておくほうが安全です。 初めて出版する場合は、特に御社側の確認工程を厚めに見積もっておくことをおすすめします。

まとめ

  • 逆算の起点は「出版日」ではなく「読者の手元に本が届いている必要がある日」に置きます。
  • 本文の組版でページ数が確定してから表紙データを作る、という順序を崩さないでください。
  • スケジュール表は工程ごとの週数だけでなく、確認者を1人ずつ行に分けて配置します。
  • 遅れの大半は印刷や執筆ではなく、社内の確認・承認の往復で発生します。
  • 紙を含む場合は組版・校正刷りの確認が加わるため、電子書籍のみより全体の期間は長くなります。

目標の公開日が決まっている場合は、その日から一緒に逆算して工程表を組み立てます。

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