「初版部数はどれくらいにすべきですか」「重版はいつ判断するものですか」。会社の本を検討し始めると、部数に関する似た言葉が次々に出てきます。重版・増刷・初版部数・刷り部数・発行部数は、それぞれ違うものを数えた数字です。

これらを混同すると、見積もりの前提や在庫の考え方がずれてしまいます。本記事では、それぞれの言葉が何をカウントしているかを整理し、あわせてAmazon KDPのように注文ごとに印刷する仕組みでは、これらの概念がどう変わるかも説明します。

この記事で分かること:

  • 重版・増刷・初版部数・刷り部数・発行部数、それぞれが指すもの
  • 従来の一括印刷とKDPのPOD(注文ごとの印刷)で概念がどう変わるか
  • 発行部数と国立国会図書館への納本の関係

5つの言葉が指すもの

まず全体を整理します。

用語 何を数えた数字か
初版部数 最初の印刷で刷った部数
刷り部数 ある1回の印刷で刷った部数(初版・増刷を問わない)
発行部数 それまでに刷った全ての部数を合計した累計の数字
増刷 在庫が少なくなった時点で、同じ本を追加で印刷する行為そのもの
重版 一度在庫が尽きた本を、再び印刷する行為そのもの

増刷・重版は「行為」を指す言葉で、初版部数・刷り部数・発行部数は「数字」を指す言葉です。 この2種類を混ぜて話すと、「重版は何部ですか」という質問のように、行為と数字がかみ合わない会話になります。

重版と増刷、何が違うのか

重版と増刷は、実務上ほぼ同じ意味で使われることが多い言葉です。あえて使い分ける場合、次のような傾向があります。

用語 使われやすい場面
重版 在庫がゼロになった本を、あらためて刷る場合
増刷 在庫がまだ少し残っているうちに、追加で刷る場合

ただし、この使い分けは業界内で統一されたルールではありません。 出版社や印刷会社によって呼び方が異なるため、取引先から「重版」「増刷」という言葉が出てきたら、在庫が完全にゼロになった後の話なのか、まだ残っているうちの追加なのかを、その都度確認したほうが誤解がありません。

これらに近い言葉として、「重版未定」「絶版」もよく見かけます。重版未定は今のところ追加印刷の予定がないという状態を指し、絶版は今後その本を刷らないと決めた状態を指します。どちらも在庫や販売計画の話であって、本の内容や権利が失われるという意味ではありません。

初版部数・刷り部数・発行部数の関係

3つの数字は、次のような関係になります。

たとえば、最初に500部刷り、その後2回に分けて300部ずつ増刷したとします。

用語 この例での数字
初版部数 500部(最初の印刷分)
刷り部数(1回目の増刷) 300部
刷り部数(2回目の増刷) 300部
発行部数 500+300+300=1,100部(累計)

発行部数は「今どれだけ市場に出ているか」ではなく、「これまでに刷った累計」です。 売れ残りや返本があっても、発行部数の数字自体は減りません。在庫数を知りたい場合は発行部数ではなく、実際の在庫数を別に管理する必要があります。

KDPのPOD(注文ごとの印刷)では概念が変わる

ここまでの5つの用語は、決まった部数をまとめて印刷する従来型の印刷を前提にした言葉です。Amazon KDPのペーパーバックのように、注文が入るたびに1冊ずつ印刷される仕組み(POD)では、これらの言葉の意味合いが変わります。

従来の一括印刷 KDPのPOD
初版部数をあらかじめ決めて刷る 決めるべき「初版部数」が存在しない
在庫がなくなったら重版・増刷を判断する 在庫という概念自体がない
発行部数を累計で管理する 販売実績はKDPの管理画面で確認する数字になる

KDPのペーパーバックは、注文が入るたびに印刷されるため、前払いの印刷費と在庫は発生しません。つまり、「何部刷るか」「いつ重版するか」という従来の判断そのものが不要になります。 手渡し用にまとめて自社で保有したい場合は、著者用コピーとして必要な分だけ印刷コストで注文する形になります。判型やページ数と印刷コストの関係は会社の本を紙でも出すにまとめています。

一方で、展示会や周年行事のために手渡し用の在庫をまとめて持ちたい場合は、この従来型の「部数を決めて刷る」考え方が必要になります。展示会での配布については展示会ノベルティに「AIで書く会社の本」、社史・記念誌のように発行部数を記録として残す意味が大きい本についてはAIで社史・記念誌を書くもあわせてご確認ください。

発行部数と納本の関係

発行部数の数字そのものが法的な手続きを発生させるわけではありませんが、関連する制度として国立国会図書館への納本があります。国立国会図書館法に基づき、頒布を目的として相当部数作成された国内発行の出版物は、納本の対象です。民間の出版物は1部を、発行の日から30日以内に納入することとされています。

社史・団体史や個人の自費出版物であっても、相当の部数を作成し頒布されているものは対象になり、相当部数は通常100部以上が目安とされています。「非売品だから」「社内配布だから」という理由だけで対象外と判断せず、頒布の規模から確認してください。 私家版・非売品の扱いについては販売しない会社の本という選択肢で詳しく解説しています。

※本記事は一般的な説明であり、個別の事案についての法的助言ではありません。納本の対象にあたるかどうかは、国立国会図書館の窓口で確認してください。

当社が引き受ける範囲

当社のAI書籍出版代行は、80万円〜(税抜・表紙デザインを含む) の中で、Amazon KDPへの入稿代行と少部数の印刷・製本までを対応範囲としています。KDPのペーパーバックは注文ごとの印刷のため、当社が在庫や重版のタイミングを管理することはありません。

展示会や周年行事に合わせてまとめて部数を確保したい場合は、必要な部数と時期を早めにお伝えください。倉庫・在庫管理は当社の対応範囲に含まれないため、保管は御社にお願いしています。

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まとめ

  • 増刷・重版は「行為」、初版部数・刷り部数・発行部数は「数字」を指す言葉で、区別して使う必要があります。
  • 重版と増刷の使い分けは業界で統一されておらず、在庫がゼロになった後の話かどうかは都度確認してください。
  • 発行部数はこれまでに刷った累計で、在庫数や売れ残りとは別の数字です。
  • KDPのようなPOD(注文ごとの印刷)では、初版部数や重版という従来の判断そのものが不要になります。
  • 頒布部数が相当数(目安100部以上)に達する場合、社史や自費出版物でも国立国会図書館への納本の対象になり得ます。

部数の考え方は、販売中心か手渡し中心かで大きく変わります。用途からご相談ください。

参考情報

※制度・仕様は改定されることがあります。実際のご検討にあたっては各公式サイトで最新の内容をご確認ください。