「売るつもりはないが、一冊の本として形にしたい」。社史や創業者の回顧録、関係者への記念品として、販売しない前提で会社の本を作りたいという相談は珍しくありません。この場合によく出てくるのが「私家版」「非売品」という言葉です。

どちらも「売らない本」を指しているようで、意味する範囲は少し違います。そして、売らないと決めた場合でもISBNや納本の扱いが自動的に不要になるわけではありません。本記事では、この2つの言葉の違いと、ISBN・流通の扱いを整理します。

この記事で分かること:

  • 私家版と非売品、それぞれが指すものの違い
  • 販売しない本にISBNが必要になる場合・不要な場合
  • 非売品でも国立国会図書館への納本が必要になり得るケース

私家版と非売品の違い

まず言葉の整理です。どちらも法律で定義された用語ではなく、慣用的に使われている呼び方です。

用語 何を指すか 焦点
私家版 個人や組織が、私的な目的のために作る本 誰が、何のために作ったか
非売品 販売せず、無償または関係者限定で配る本 売るか売らないか

私家版は「作り方・立ち位置」、非売品は「流通のさせ方」に焦点がある言葉です。 社史を私家版として作り、関係者に非売品として配る、という組み合わせが典型的です。逆に、私家版として作った本を後から書店で販売する、という進め方も可能で、私家版であることが販売を禁じるわけではありません。

会話の中でこの2語が混同されやすいのは、「私家版だから非売品のはず」という思い込みが働くためです。実際には、私家版として作った本を後から一般販売に切り替える会社もあれば、通常の企画として作った本の一部を非売品として関係者に先行配布する会社もあります。どちらの言葉を使うにせよ、決めるべきことは「誰に」「いくらで」配るかという流通上の条件です。

販売しない本にISBNは必要か

ISBNは、1つの書名・1つの発行形態ごとに付けられる識別番号です。ISBNの取得自体に法律上の義務はありません。 社内配布や関係者への手渡しだけが目的なら、ISBNがなくても本は作れます。

一方で、次のような場合はISBNが必要、または実務上あったほうがよい状況になります。

状況 ISBNの要否
社内・関係者への手渡しのみ 不要
Amazonなどのオンライン書店で扱う 必要
図書館の蔵書として管理してもらう 実務上あったほうがよい
将来、書店流通に切り替える可能性がある 取得を検討する価値がある

Amazon KDPでペーパーバックを出版する場合、KDPが無料のISBNを提供しています。 ただし、無料ISBNはKDPでのみ利用でき、出版社の表示は「個人出版」になり、出版後に変更もできません。非売品として作った本を後からKDPで無償配布する、という使い方であればこの無料ISBNで足りることもありますが、自社名を出版者として明確に出したい場合は、日本図書コード管理センターで自分のISBNを取得する必要があります。ISBNの構造や取得料金の詳細はISBNと書店流通の基礎にまとめています。

非売品でも納本の対象になり得る

「非売品だから公的な手続きは関係ない」と考えがちですが、ここは注意が必要です。国立国会図書館法に基づく納本制度は、頒布を目的として相当部数作成された国内発行の出版物を対象としています。

国立国会図書館の案内では、社史・団体史等の出版物や個人による自費出版物であっても、相当の部数を作成し頒布されているものは納本の対象になると説明されています。相当部数は通常100部以上が目安です。民間の出版物は1部を、発行の日から30日以内に納入することとされており、納入出版物代償金(小売価格の5割+送料に相当)が交付される仕組みもあります。

「販売しない」ことと「納本の対象外である」ことは、イコールではありません。 社史を100部単位で関係者に配布するようなケースは、非売品であっても対象になり得ます。該当するかどうかは、頒布の規模や目的から国立国会図書館の窓口で確認してください。部数の数え方そのものについては重版・増刷・初版部数・刷り部数・発行部数で解説しています。

※本記事は一般的な説明であり、個別の事案についての法的助言ではありません。納本の対象にあたるかどうかは、国立国会図書館の窓口で確認してください。

私家版・非売品にする場合の実務チェック

非売品として作る場合、次の点を配布前に決めておくと後戻りが少なくなります。

  • 配布先の範囲:社内だけか、取引先や来場者にも配るか
  • 配布部数:相当部数(目安100部以上)に達するかどうかで納本の要否が変わる可能性がある
  • ISBNの要否:今後販売に切り替える可能性があるか
  • 著者名の表記:社名か個人名か。非売品でも表記の考え方は販売する本と同じです

著者名や表紙の表記の考え方は、販売する本と大きく変わりません。表紙デザインの決め方は会社の本の表紙デザイン、展示会での配布を想定する場合は展示会ノベルティに「AIで書く会社の本」もあわせてご覧ください。

当社が引き受ける範囲

当社のAI書籍出版代行は、80万円〜(税抜・表紙デザインを含む) で、非売品として配る前提の本でも執筆・編集・表紙デザイン・少部数の印刷製本まで対応します。社史や記念誌のように非売品として作られることが多い本の進め方はAIで社史・記念誌を書くでも紹介しています。

一方で、ISBNを自社で取得するかどうかの最終判断、取得する場合の申請と実費のご負担、配布先リストの管理と納本の要否の判断は御社にお願いしています。「販売しない前提だが将来は分からない」という場合も、その旨をお聞かせいただければ、あとで困らない選択肢をご提案します。

AI書籍出版代行に相談する

まとめ

  • 私家版は作り方・立ち位置を表す言葉、非売品は流通のさせ方を表す言葉で、重なりつつも意味は異なります。
  • 販売しない本にISBNの取得義務はありませんが、オンライン書店で扱うには必要になります。
  • KDPの無料ISBNは「個人出版」表示・KDP限定・変更不可という制約があります。
  • 非売品であっても、頒布部数が相当数(目安100部以上)に達すれば国立国会図書館への納本の対象になり得ます。
  • 配布先の範囲・部数・ISBNの要否は、非売品として作る前に決めておくと後戻りが少なくなります。

売らない本をどう扱うかは、配布の規模と将来の可能性からご相談いただけます。

参考情報

※制度・仕様は改定されることがあります。実際のご検討にあたっては各公式サイトで最新の内容をご確認ください。